『くれなずめ』――。この耳慣れないタイトルは、日が暮れそうで暮れないでいる状態、転じて、前へ進もうとしても障害があってうまく進めないでいる状態を指す『暮れなずむ』を命令形にした造語。友人の結婚披露宴で余興を披露するべく、久しぶりに集まった高校時代の友人6名。それぞれの道を歩きながらも、再会すればすぐに青春時代へとタイムスリップして、思い出話に花が咲く。披露宴と二次会の間の“いま”と、それぞれが友との思い出を振り返る“過去”が交錯しはじめる頃、やがて6人の間に横たわる“真実”が明らかとなる――。

 

松居大梧監督が作・演出を務める劇団ゴジゲンで2017年に上演された舞台を映画化した『くれなずめ』。前田敦子さんは、成田凌さん演じる「吉尾」や高良健吾さん演じる「欽一」たち6名と同じ高校に通っていた同級生の「ミキエ」を演じています。6名の思い出話にフラッシュバックのように出てくる「ミキエ」は彼らにとって特別な存在。ノスタルジックな青春ドラマのスパイス的な役割を担う「ミキエ」を、前田敦子さんはどう演じたのか。今年7月に30歳の節目を迎える彼女に、作品に対する思いや役作り、そして将来への思いを伺いました。

 


紅一点のミキエ役は
前田さんしかいないと指名されて


前田敦子さん(以下、前田):『くれなずめ』は松居大梧監督が主宰する劇団ゴジゲンで人気の作品と聞いていました。実際の作品を舞台で観たことはありませんでしたが、別の作品を拝見していて、そのときに男の人たちのわちゃわちゃ感みたいなのがすごく面白かったのを覚えていたんです。それで『くれなずめ』が映画化されると聞いて、絶対に面白くなりそう!と思っていたら、監督とキャストさんたちみんなで話し合ってミキエ役は私がいいと推してくださったそうで……。なんだかオーディションに受かったような気分でとっても嬉しかったです(笑)。

 

学生時代の仲間である6人の男子たちと、その同級生であるミキエ。一緒につるんでいたわけではありませんが、彼らの中でずっと記憶にある女の子の役です。ミキエ役に選ばれた理由を、ご自身で分析していただきました。

前田:監督には『時空を超えられそうな感じがするから』と言われました。若い頃から大人になるまでの間を描いた作品なので、その時間をパッと超えられそうということかなって思います。それと、最初ミキエは「ミキエ? 絶対にあいつは(恋愛相手として)ない!」と6人の男の子たちに言われるような存在からスタートするんです。そこから関係性が変わっていくので、「最後に6対1でやり合える女性は前田さんしかいない」とも監督に言われて、それってどういう意味なんだろうと思いつつ(笑)、でもそう思ってくださったのはすごく嬉しかったです。

前田さん演じるミキエが最初に登場するシーンはかなり強烈。怒髪天を衝くほどの怒りを露わにするミキエの姿は男子6人の青春の記憶にもしっかりと残っています。前田さんはこの役に対して、どんな役作りをされたのでしょう? 

前田:ハチャメチャな学生時代を過ごした男の子たちの青春のページに、何ページも出てくる女の子ってそんなにいないですよね。そうなると、やっぱりある程度強いインパクトが残せるような子じゃないとダメだなと思って……。監督が「ミキエはずっと怒っている子ではなく、男子のメンツの中で『アイツ、マジで怖かったよね』って笑い話になっているページがあって、その姿が怒っているミキエなんだ」と話していらしたのを聞いて、すごく納得できました。最初は「怒ってばっかりで大丈夫かな」と思ったんですけど(笑)、彼らの記憶に残っている姿として考えるのなら、怒り続けているのも逆に面白いのかもって。いわゆる、“誇張されたミキエ”なんですよね。

 

ミキエは思ったことをそのままストレートに伝えるキャラクター。それを演じた前田さん自身は、物事にはっきり白黒つけるタイプ?

前田:白黒はっきりしたいタイプではありますが、それを伝えられるタイプではないですね。だからミキエのそういうところはちょっといいなって(笑)。ケンカできるくらいのほうが、人生でこじれることが少なくて、シンプルなんじゃないかと思うんです。私、女子同士でケンカしたことないんです。

女性だけで構成された超人気グループにいらっしゃったのに、とても意外な発言!

前田:ですよね(笑)。私は独りでも大丈夫なタイプなので、誰かに何かを言われていると分かったら「言いたいことがあるんなら陰で言わずにはっきり言って!」と立ち向かっちゃうんです。でも自分がイヤだと感じたことや、ここは違うんじゃない?と思ったことを正義感として相手に伝えられるかと聞かれると、むしろ“飲み込んじゃう”ほうで何も言えないんです。だから、ミキエのようにカラッと生きられたら嫌われないんじゃないかなって思いました。
 

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30歳目前!女優として輝きを増す前田敦子さん
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