30年の年月を経て...上皇陛下と美智子さま「生前退位の日」一礼に込めた想い

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退位に向けて皇室典範に特例法


皇室に関する法律である皇室典範の第4条には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」とあります。
崩御してはじめて次の天皇が立つことができるというのです。
「生前退位」を行うためには、この法律を改正しなければなりません。

8月に放映された陛下(上皇さま)による「おきもち」のビデオメッセージを受けて、国が皇室典範の改正を検討し始めました。

やがて2017年(平成29年)6月16日、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が公布されました。この特例法は、2019年(平成31年)4月30日に施行されることとなります。

この法令改正により、天皇陛下のご退位は2019年4月30日、翌5月1日に皇太子浩宮さまがご即位されることと決まったのです。

皇室典範の第4条にあたる特例法第2条は、「天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位する」と改められました。そして、ご退位にあたって「退位の礼を行う」と定められました。

また、天皇陛下は「上皇」、皇后美智子さまは「上皇后」と呼ばれ、敬称は「陛下」となりました。同時に、国民の祝日である天皇誕生日を2月23日に改めることとなりました。
 

美智子さまへ「心からねぎらいたい」


ご退位を翌年に控えた2018年(平成30年)12月23日、陛下(上皇さま)は85歳のお誕生日をお迎えになり、誕生日前の会見でおことばを語られました。
即位翌年の1990年からほぼ毎年行われてきましたが、在位中の会見としてはもとよりご退位後も含めて、このときが最後の会見となりました。

陛下は約16分間、象徴として歩んだ平成を振り返り何度も感極まって言葉を詰まらせながら、お話しされました。

会見の中で、陛下はとりわけ戦争を経験した天皇として平和への思いを熱く語られ、さらに災害の被災者、障害者、海外への移住者などに心を寄せられました。

やがて美智子さまの献身についての話題に差し掛かると、感極まったように涙声になったのです。

「……私は成年皇族として人生の旅を歩み始めて程なく、現在の皇后と出会い、深い信頼の下、同伴を求め、爾来じらいこの伴侶と共に、これまでの旅を続けてきました。……」

そして、天皇としての旅を終えようとしている今、皇后が自分の人生の旅に加わり、60年という長い年月にわたり皇室と国民への献身を真心をもって果たしてきたことを、「心からねぎらいたく思います」と感謝のお気持ちを伝えられたのです。

美智子さまは会見が開かれた皇居・宮殿に付き添い、会見が終わるのを別室でお待ちになっていました。
陛下のかたわらには、いつも美智子さまがいらしたのです。