「気をつけよう」ではミスはなくならない

 

私の経験から結論としていえるのは、「失敗」や「ミス」は、「気をつけよう」ではなくならない、ということです。

ちょっとした仕事のミス、何か忘れ物をしたといったミス。こうした日常の些細なミスをした後は、大抵「次はやらないようにしよう」と思うものです。しかしそれでも、やっぱりミスを繰り返すことがほとんどです。

 

「気をつけよう」では直らない。だからこそ、人間の創造力と、ミスの経験を共有することで、世の中の失敗・事故・ミスをなくしていこう、というのが私たち失敗学会の仕事です。

ただ気をつけるのではなく、創造力を働かせて、1つだけ手順を加えるとか、たとえば、会社の定型書類で書類そのものを変えられなくても、パソコンの画面を工夫してちょっとだけ書類の見え方を変えるとか、そうしたことで無理なくミスがなくせるのです。(飯野謙次さん)

著者プロフィール
飯野 謙次(いいの けんじ)さん:
スタンフォード大学工学博士。1959年大阪生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、General Electric原子力発電部門へ入社。その後、スタンフォード大学で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSE LPを設立、ゼネラルパートナーに就任(現職)。2002年、特定非営利活動法人 失敗学会副会長となる。著書に『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』(文響社)など。

宇都出 雅巳(うつで まさみ)さん:トレスペクト教育研究所代表。1967年生まれ。東京大学経済学部卒。出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立。30年にわたり、心理学や記憶術、速読を実践研究し、脳科学、認知科学の知見も積極的に取り入れた独自のコミュニケーション法・学習法を確立。企業研修やセミナー・講演・個別指導を行う。専門家サイト・オールアバウト「記憶術」ガイド。

 

『ミスしない大百科 仕事は速くてもミスがなくなる科学的な方法』
著者:飯野謙次/宇都出雅巳 SBクリエイティブ 1650円(税込)

「日付・時間を間違えやすい」「ものをなくす」「早とちり」など、仕事や家庭で日常的に起こるミスをなくす方法を伝授。「気をつける」といった精神論ではなく、科学的根拠に基づいているだけに性別や年齢問わずに実践できるものばかり。ミスによるタイムロスの解消および生活の質向上を目指す方におススメです。


構成/さくま健太