加齢が目に見える皮膚と同じように、臓器も老化する


ここまでは、皮膚の老化について紹介してきましたが、少し老化の起こる仕組みや老化の問題がお分かりいただけたでしょうか。

ここで注意が必要なのは、老化は何も皮膚だけで起こっているわけではないということです。皮膚は外見的にわかりやすく、老化を感じさせやすいですが、このような老化が実は、それぞれの臓器で、それぞれのスピードで時間とともに起こり続けているのです。

 

胃や腸、骨や筋肉、肺や心臓。あらゆる臓器が少しずつ歳をとり、老化が進んでいきます。老化が進めば、皮膚と同様、少しの負荷に対応しきれなくなり体調を崩しやすくなります。

 

言い換えれば、若い頃のような「ゆとり」が臓器になくなっていくのです。若い時には誰しもがバネのようにしなやかに、変化への適応能力を持っています。そのしなやかさが徐々に失われ、ほんの少しの変化で大きな体調の変化をきたすようになります。また、一度傷がついた時の回復力も悪くなってしまいます。ちょうど、皮膚の傷の治りが遅くなり、場合によって傷跡が残りやすくなるように、腎臓も脳も傷を残しやすくなってしまうのです。

このような事実を学んでいくと、歳をとることに絶望しか感じられなくなってしまうかもしれませんが、そう思われるのはまだ早いかもしれません。この連載では、老化のスピードを緩め、老化する体と上手に付き合う方法について論じていきたいと思います。また、歳を重ねることでしか得られない良いこともたくさんありますから、それについてもぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
 

参考文献
1    Russell-Goldman E, Murphy GF. The Pathobiology of Skin Aging: New Insights into an Old Dilemma. Am. J. Pathol. 2020. DOI:10.1016/j.ajpath.2020.03.007.
2    Yaar M, Gilchrest BA. Skin aging: Postulated mechanisms and consequent changes in structure and function. Clin Geriatr Med 2001. DOI:10.1016/S0749-0690(05)70089-6.
3    Griffiths CEM. The role of retinoids in the prevention and repair of aged and photoaged skin. Clin. Exp. Dermatol. 2001. DOI:10.1046/j.1365-2230.2001.00892.x.

 

前回記事「「加齢」は誰もが等しくするのに「老化」のスピードは人によって違う理由【医師の解説】」はこちら>>

 
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