受けられるサービスが増える


もう少し現金な加齢のメリットも見ていきましょう。
例を挙げればキリがありませんが、高齢者に対しては、入館料が無料になったり、優待券が手に入ったりする観光施設が各地域に数多く存在します。
また、シルバーパスと呼ばれるような高齢者向けの低額チケットを発行する公共交通機関もあります。

このように、財布に優しいサービスが使える工夫が数多く存在しており、生活がしやすくなるかもしれません。また、地方自治体によって、高齢者の外出を支援するような取り組みに力を入れているところも多くあります。歳をとっても安心して暮らせる街づくりを心がけてくださっている自治体があるのは心強いですね。
 

仕事や子育てから離れた自由時間が手に入る

 

もう一点挙げるとすれば、「自由時間」の増加でしょう。

ゴルフが趣味だという70代の患者さんに「先生、趣味はあるのかい?」と尋ねられ、「医学以外に趣味がなくて困っています。」とお話ししたことがありました。そうしたらすぐに返事が返ってきて、「若いうちはそれでいいんだよ。自分もそうだった。趣味は老後をゆっくり楽しむためのものだ」と教えてもらいました。

 

現役世代における仕事や子育てが占める時間というのは非常に長く、自由時間を確保するのは難しい人という人も多いと思います。一方、歳をとってくると、仕事が忙しかった方でも仕事の負担が軽くなったり、子供がいる方なら子供が自分の手を離れたりして、自由時間が増える傾向にあります。捉え方によっては、これも良い点と言うことができるのではないでしょうか。
それまでの人生で「やりたいけれど時間がない」と思う何かがあった人にとっては、この歳をとってからのタイミングこそが、自分のやりたいことに時間を没頭できるチャンスかもしれません。
 

政治や社会への貢献度が高くなる


歳をとるメリットは個人に留まらず、社会に対してももたらされます。高齢者が多く住む社会では、政治やボランティア活動に参加する人が多くなるという点も良い点として挙げることができます。
国政選挙における投票率は、日本でも米国でも高齢者の方が若い世代よりも高いことが報告されています(参考文献5,6)し、ボランティア活動に参加する人の割合も高齢な層でより高くなることが報告されています(参考文献7)

加齢というと、とかくその問題点やネガティブな側面に焦点が当たりがちですが、実はこのように、個人としても、また社会としても、挙げていけばキリがないというほど、ポジティブな側面がたくさんあります。加齢をポジティブに考えていたとしても、ネガティブに考えていたとしても、人は生きている以上、年齢が上がっていくことを避けることはできません。
「加齢はいいことばかりなのだ」と言いたいわけではありませんが、悪いことばかりでもないと確認し、加齢に対する捉え方を考え直すきっかけにしていただければと思います。

参考文献
1 D’Alonzo GE. Scope and impact of allergic rhinitis. J. Am. Osteopath. Assoc. 2002; 102. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12090643/ (accessed April 18, 2021).
2 Dottorini ML, Bruni B, Peccini F, et al. Skin prick-test reactivity to aeroallergens and allergic symptoms in an urban population of central Italy: A longitudinal study. Clin Exp Allergy 2007; 37: 188–96.
3 Lipton RB, Bigal ME, Diamond M, Freitag F, Reed ML, Stewart WF. Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy. Neurology 2007; 68: 343–9.
4 Dahlöf C, Linde M. One-year prevalence of migraine in Sweden: A population-based study in adults. Cephalalgia 2001; 21: 664–71.
5 総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について. https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/ (accessed April 18, 2021).
6 Bureau UC. Voting Rates by Age. https://www.census.gov/library/visualizations/2017/comm/voting-rates-age.html (accessed April 18, 2021).
7 (No Title). https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou.pdf (accessed April 18, 2021).

*「5つのM」=アメリカの老年医学学会が提唱している、高齢者診療の指標

写真/shutterstock

前回記事「年齢別「風邪を引く回数」に驚き!加齢で風邪を引かなくなるって本当?」はこちら>>

 
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