先日、「ジェンダーギャップ解消」をテーマにしたトークイベントに参加していたのですが、その場で話題になったのは「男性の生きづらさ」の問題でした。ジェンダーギャップの話をするときに私たちはどうしても女性が抱える負の側面についての話をしがちです。

たとえば女性管理職の比率は11.9%(下図)で、10年間でほとんど変わっていませんし、上場企業における女性役員比率は6%に過ぎず、女性役員数ゼロの上場企業数は実に半数以上にのぼります(注1)

厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」より。役職別女性管理職割合の推移(企業規模 10 人以上)


その結果として、先日、世界経済フォーラムから発表された「ジェンダーギャップ指数2021」では、日本は調査対象となった世界156カ国の中で120位という、今年もまた非常に低い順位となりました。

 

日本では働く女性の数自体は増えていますが、そのうち約6割が非正規労働者で、男性の働き方とは明らかに違いがあります。非正規だからダメだということではなく、雇用形態が性別と結びついて固定化してしまっているところが問題です。

しかし男性の生きづらさと女性の生きづらさは表裏一体です。女性の働き方にこれだけ偏りがあるということは、男性の働き方にもどこかゆがみがあるもの。男性が育休を取りたくても取ることができない……。そんな現状は象徴的な出来事だと感じます。

 

私は2013年から、フリーランスとして働きたい女性たちと企業との仕事のマッチング事業を展開しています。

ところがマッチングをするなかで気づいたのは、女性側が時短やフリーランスなどのフレキシブルな働き方を選択すると、そのぶんだけ育児・家事などが女性側に押し寄せてくる事象があることです。もちろん、家庭によりますし、すべての既婚フリーランス女性のご家庭でそうしたことが起きているわけではないのですが。

ある30代の女性フリーランスのご家庭ではパートナーの方が多忙で帰宅が毎晩22時~23時ごろ。彼女は正社員フルタイムで仕事をされていたのですが、お二人目の出産を機に仕事と家庭の両立をしやすくするためにフリーランスへ転向。けれども彼女がフリーランスであることを理由に、「家で仕事をしているなら、きみがもっとできるよね」とパートナーが以前にも増してまったく育児・家事に関わってくれなくなってしまった……と悲しそうに話してくださったことがあります。

女性の働き方の問題は女性だけでは解決しえない。これが私自身の実感です。男性もふくめて社会全体で長時間労働や働く時間・場所の固定化の問題が解消されていかないと、根本的な課題解決にはなりません。

その意味ではコロナ禍で首都圏を中心にテレワークが浸透しつつあること、テレワークを実施している男性の家事・育児時間が増加している現状(下図)には非常に希望が持てます。

内閣府男女共同参画局「コロナ下の女性への影響について」より、「男性の家事・育児時間の変化の推移(平均値)」


経営者や管理職など意思決定層が多様になることも重要ですし、私たちの中にあるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に意識的になることも必要。互いが抱える生きづらさが少しずつ解消されて、本当の意味で一人ひとりが自分らしく力を発揮できる社会にしていきたいですし、自分自身もそれに向けてできることをしっかりやっていきたいです。男性の産休新設や男性育休義務化がそれぞれの生きづらさを解消する一つのきっかけになればと期待しています。
 

(注1)東京商工リサーチ「2020年3月期決算上場企業2,240社 『女性役員比率』調査」より
 

前回記事「報ステCM炎上に見る「意思決定層が多様であること」の重要性」はこちら>>

 
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