細胞が日々生まれわかっているということをご存じの方にとっては、それでも体が衰えていくということに納得がいかないかもしれません。それでは、なぜ体は老化していってしまうのでしょう。

 


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爪や髪が伸びるのは、細胞が生まれ変わっている証拠


その前に、少し細胞の生まれ変わりについて整理をしておきたいと思います。実際に、日常生活を送る中で、細胞の生まれ変わりを意識するというのはなかなか難しいかもしれません。

ただ、慎重に過去1ヶ月や2ヶ月を振り返ってみると、そういうシーンがあることにも気がつくはずです。例えば、1ヶ月に1度髪を切りに行ったり、1週間に1度爪を切ったりというのは、その頻度は違えども皆が経験することです。それらは面倒に感じられることかもしれませんが、まさに細胞が生まれ変わっているというのを感じられる時かもしれません。

 

爪は、1週間で約1mmずつ、1ヵ月で平均3.5mmずつ伸びることが知られています(参考文献1)。爪が伸びる源になっている生きた細胞は、爪の根もとの皮膚の下に隠れていて、ここにいる細胞が増殖を繰り返して爪が伸びていきます。

伸びた硬い爪は、指先をけがなどから守ったり、指の腹で何かを触ったり押したりするときの逆圧となって繊細な指の感触を支えています。

私たち医師も、診療で「爪は1週間で1mm伸びる」という知識を活用することがあります。爪に時々横向きに白い線が入っているのを見かけると、爪の根もとからの距離を測って、「1ヶ月ほど前に体調を崩して入院されませんでしたか?」などと聞くのです。このように、爪が体の傷あとを残し、私たちに情報を知らせてくれることがあります。


血液の細胞も生まれ変わっている!


爪や髪は、もしかすると最も生まれ変わりを感じやすい体の部位かもしれませんが、細胞の生まれ変わりは、多かれ少なかれ体のさまざまな部位で起こり続けています。そして、その速度は、どこの細胞かによって大きく変わることが知られています。

例えば、血を止める役割を担う血小板という細胞の寿命は約10日、血の赤色を作る赤血球の寿命は120日、肝臓の細胞なら寿命は1年前後といった具合です。

 
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