結婚願望ありありな30代という「ふつう」を演じるしんどさ

 

父親、母親、妹という家族構成のもとで育った山口さんは、かつては世間一般でいう「ふつうの家族」の一員でした。しかし、現在は37歳の独身。「ふつう」から逸脱してしまった自身の境遇を以下のように分析しています。

 

「世の中に対してなんらかの言い訳をしなければならないのは、常に『結婚していない』ほうなのだ。『これがふつう』と決められた途端に、“ふつう”でないほうは世の中のスタンダードからの距離を説明する責任を負わされる。それは大変な負担だ。だからとりあえず、私たちは『結婚したいです』と口にする。『結婚したいのにできない人』という、理解可能な『ふつう』のフレームワークのなかに自らはまり込みにいく。そうすることでめんどくさいアカウンタビリティを免れようとする」

「30代も後半になった独身女性は、結婚したくてたまらないに違いない」という世間の固定観念と真っ向から闘うつもりはない。でも、卑屈な思いを抱きながら「ふつう」を演じるのもしんどい。がんじがらめの山口さんが導き出した答えはこうでした。

「私たちは闘いを避けることなんてできない。自分の思うように生きること、それ自体が闘いなのだから。私たちは、結婚することで新たなステイタスを得るわけではない。人間的な成長をするわけでも、自分以上の存在になるわけでもない。そんな“ウルトラC”なんて、ほんとはどこにもないんだよ。できるだけ誠実に、できるだけ懸命に自分の人生を生きるしかない。それではじめて人は人として成長する。そしていつの日か、社会から認知され、さらには尊重されることになるのだ」