育ちから来る闇を演じ切った10代の清原果耶
 

さて、このふゆという存在は、器量良しで性格もいいのにその育ちから自分を安く考えている、というところが最大のポイントでした。それが周囲の人たちから大切に扱われることで、自分の価値を思い直していく。まさに、もう一人のヒロインのような大切な存在です。が、こんな複雑で微妙な感情表現ができる女優となると、どれほどいることでしょう。しかも若い女優で。それを見事なまでに演じ切ったのが、何とこのとき、若干13歳だった清原果耶なのです。まさに“ピュアな闇”を世間に初お披露目した瞬間でした。

 

その後も仕事柄、様々な彼女の出演作に目を通してきましたが、どの役においても、このピュアさと闇が素晴らしい塩梅で共存しているので、見ていて感情移入できるし、作品の持つメッセージもしっかり届いてくるのです。

とくに「やはり彼女は桁違いだ」と感じさせられたのが、ネットフリックスで配信されているドラマ『宇宙を駆けるよだか』でした。かわいくて性格もいいあゆみと、ブスでひねくれている然子が、心だけ入れ替わってしまうというもの。然子は美人になって人生を謳歌するのかと思いきや、ひねくれた性格はそのままなので、だんだん周囲から距離を置かれるようになる。一方であゆみは、見た目は然子でも性格が良くなったので、次第に人気者になっていき、何だか見た目もかわいくなっていく、という実に深い作品です。

このドラマで清原果耶が演じているのが、心がブスになった美人・あゆみです。これがまあ見事で、本当に然子が乗り移っているとしか思えない荒んだ空気を放ちまくっているし、だんだんとかわいくさえ見えなくなってくるから、このドラマの根幹である「ブスとは何なのか?」という問いが、直球で胸に突き刺さってきたのでした。

おそらく『おかえりモネ』でも、彼女は派手ではないものの、私たちの心に着実に爪痕を残すような、爽やかな感情の成長を見せてくれることでしょう。そしてその姿から、無意識に「闇なんてあって当たり前なんだ」とホッとし、「闇があってこそ人は成長できるんだ」と生きる力をもらえるのではないかと、期待している次第です。

……余談ですが、このドラマの主題歌は人気バンド・BUMP OF CHICKENが歌っています。そのピュアさから世間の残酷さに傷つきレールから脱落してしまった(と私は思っている)藤原基央の歌声は、まさにモネの“ピュアな闇”をそのまま体現しているかのような澄みっぷりです。普段は30秒コマ送りを3回押して主題歌を飛ばして見ている私ですが、このBUMPの主題歌だけは毎回しっかり聞き、飽きもせず毎回ジーンと胸にきてはちょっと目を潤ませているのでした。恥ずかしながら……。
 


前回記事「朝ドラ『おかえりモネ』とNiziUの共通点。いま、純真ヒロインが求められる理由」はこちら>>

 
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