② 物件をたくさん見る

 

中村:投資用の不動産を紹介してくれる業者さん選びは本当に難しいので、「物件をたくさん見ること」も大切です。
いくら投資したら、いくら返ってくるかという数字は自分で出せると思うんです。それで資金繰りは問題ないかを判断する。
ここまで考えて初めて、その物件を扱っている業者さんに話を聞いてみるのがいいと思います。

 

西山:先に不動産業者さんのところで「何かいい物件はないですか?」と聞くのではなく、ということですね。

中村:はい、そうです。物件を見てから、その後に業者さんの話を聞きにいくか、セミナーを聞いてみるといいでしょう。もし自分が目指しているものと違うなと思ったら、それ以上は深入りしないほうがいいと思います。

「利回りがよかった」という理由で、その土地のことをまったく知らず、一度も物件を見ないまま買ってしまう方もいますが、それも、その方にとっての正解であればいいですが、物件をまったく見ないで買うことは、やはりリスクがあると思います。

例えば自分が生まれ育ったエリアや、以前よく通っていた地域であれば、土地勘もあるので、大学生が多いのか、単身者のビジネスマンが多いのか、といった事情もわかりやすいので、失敗を減らせるでしょう。
先に業者さんのところにいくよりも、やはり「物件」について詳しく調べることが大切だと思います。


③ 気になる物件があったら「実際に計算してみる」


中村:さらに、「実際に計算してみること」がおすすめです。もし3000万円でアパートを買ったとしたら、1年経った後に、どれくらいの収入があり、どれくらいの価値になっているのか。節税を考えている方なら、どれくらいの節税効果があるのか、を計算してみてください。

ただし節税の方法は、不動産投資だけではありません。例えば、月2万円でiDeCoを積み立てていったら、所得控除によって税金還付がありますから、それと比べてみてもいいでしょう。

西山:確かに、不動産投資を考える方は所得が高い人が多いかもしれませんが、所得が高ければ、iDeCoでの節税効果も大きくなりますものね。

中村:はい、リスクの面で考えてみると、月2万円で始めるiDeCoと、数千万円の借金を抱える不動産と、どちらが高いリスクかは明らかですしね。

ただ、ご本人が、住宅ローンと同じように、投資物件を買ってローンを組んで「団体信用生命保険」をつけて、その点が魅力だということであれば、それも一つの方法です。
それは、iDeCoにはないメリットです。でも「投資」という目的で始めると、ちょっと違うことになってしまいますね。

営業トークで「保険の機能があります」「ローンが払い終われば、受け取る家賃が将来の年金がわりになります」「税金の還付があります」「やることは何もありません。全部お任せできます」といわれたとしても、「メリットばかりだな」と鵜呑みにしてしまうのは危険です。

以前お伝えしましたように、物件自体が、いざ売ろうと思っても誰にも売れない物件かもしれないし、相場よりものすごく高いかもしれません。
今後30年のうちに、受け取れる家賃が下がっていくかもしれません。

業者さんからは、受け取る家賃がずっと変わらない設定でシミュレーションされることもあると思いますが、実際には固定資産税やエアコンの修理代など、出ていくお金もあります。「出ていくお金」もしっかり把握して、計算したうえで判断することが必要ですね。


④ 買う際には「頭金をしっかり入れる」


西山:では、実際にしっかり調べたうえで、いざ「買おう」と思ったときには、どうすればいいでしょうか。

中村:「ローンを借りすぎない」ということが重要ですね。2年くらい前までは、フルローンといって、頭金を入れずに、物件価格の100%をローンで借りられるケースも多々ありました。
でも現在は、フルローンは難しくなっていまして、2割などの頭金を用意して買うケースが基本になっています。

やはり、「頭金をしっかり入れること」は重要です。売るときに売りやすいですし、最初にどん!と大きなお金を入れることで、緊張感があるんですよね。

西山:大きな頭金を入れることになれば、「しっかりお金を準備して、いい物件を見極めなくては」と気が引き締まりそう。

中村:そうなんです。「3000万円のマンションを買って、頭金なしで、いきなり家賃収入が入りますよ」といわれるのと、「頭金を600万円、現金で用意しないと始められませんよ」というのとでは、後者のほうがより慎重になるでしょう。
頭金を用意して買うということは、金銭的なやりくりだけでなく、心理的な面でもいい効果があります。

西山:不動産投資は、一度走り出したら「困ったからやっぱりやめます」というわけにはいきませんから、できるだけ慎重な方がいいわけですね。

中村:はい、頭金をしっかり入れてローンを借りすぎないとか、物件を安く買っておくなどの工夫によって、いざというときにも売りやすいはずです。「やめたいと思ったときに、やめられる状態で買うこと」が大事だと思います。
 

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)


第1回「不動産投資に失敗した人の3つの共通点「営業トークを鵜呑みにしない方法」」>>

第2回「不動産投資を始める前に「覚悟しておくべき」3つのこと」>>

 
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