脳は、誰かと比べないと幸せを感じられない


誰かが得をしているとモヤッとするのは、人間が、何かと比較しないと幸福を感じられないというちょっと残念な脳の性質のためでもあります。

 

比較せずにはいられないなら、他人と比較するのでなく、過去の自分と比べてみよう……よく聞く励ましの言葉ですね。私も、「誰かと比べてしまう自分を何とかするにはどうすれば?」と聞かれたら一応は、ややためらいを覚えながらもそう答えると思います。

 

けれど、他人でなく過去の自分と比べるなんて、本当に毎日毎日自然なかたちでできる人がどれくらいいるでしょう? 頑張らなければできないこと、というのは、頑張れなくなったらできないことです。つまり、長い年月継続するのはほぼ不可能なことなのです。
過去の自分と比べて、というこのアドバイスがもし誰にとっても簡単にできる、有効な助言であるのなら、とっくの昔に、誰かの幸福を見て不公平感を覚えたり、誰かの失敗を見て心ひそかにほくそえんでしまったりする人は、歴史のはるか彼方に絶滅し去っているはずでしょう。

そもそも現在と過去を比べられるほど、人間の記憶力はよくはありません。自分が何を食べたのかさえ、1日前、1週間前くらいならば覚えているかもしれませんが、1年前、3年前、となったら、克明に記録しておきでもしない限り思い出せる人はほとんどいないのではないでしょうか。むしろ、思い出せる人はやや病的なところのある人ではないかとすら思われてしまうかもしれません。
  
つまり、私たちはそれほど自分自身の基準を持てない、悲しい生き物でもあるということです。けっしてあなたの性格が悪いわけではなく、人間というのは誰かと自分を比較してしまうものであり、自分の基準よりも他者との比較を優先しやすいものなのです。そうした傾向を持ってしまう裏側には、そうであることが必要な理由が必ずあるのです。