人間関係が変化するにつれ、井手上さんは目の前の世界が違って見えるようになります。それは、自身の内面もまた大きく変化したということだったのでしょう。

「自分が楽しいと感じること、好きなこと、大切なもの、それは自分で決めよう。そう決意した時から、私の世界は少しずつ色付き始めました。モノクロだったはずの世界に鮮やかな光が差し、美しく色付き始めていく──。それがはっきりとわかったような気がしたのです」

 

井手上さんは中学校の恩師の勧めでこの時の気持ちを「カラフル」という弁論文にしたため、最終的には2017年に開催された「第39回 少年の主張全国大会」に出場し、文部科学大臣賞を受賞することになります。東京の聴衆に向けて披露した「カラフル」では、ラストをこのように締め括りました。

 

「考えることも好きなことも大切なことも一人ひとり違うのです。一人ひとりが違うからこそ、相手に興味がわき、もっと知りたいと思ったり、愛しく思えたりするのではないでしょうか。雨上がりの空にかかる虹が美しいようにさまざまな色が輝き、調和すればこの世界はもっと美しくなると思うのです。一人ひとりが自分を自由に表現できる世界。そんなカラフルな世界を一緒に作っていきましょう」