高校へ進学した井手上さんは周囲の勧めもあってスターの登竜門「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募し、最終審査で見事DDセルフプロデュース賞を受賞しました。“ありのままの自分”に対してさらに自信を高めた井手上さんは、「人を好きになれば心が豊かになるし、自分自身を磨こうと成長することもできる」と、恋愛に対しても前向きに捉えられるようになったと言います。

「もちろん、好きという気持ちをいざ行動に移す時には、何かとハードルだってあるし、誰かを傷付けることは慎むべきでしょう。だけど、心はいつだって自由でいい。好きになった誰かと同じくらい、誰かを好きになっている自分自身の気持ちも大切にしていきたいと私は思っています」

 

モデルとしてメディアに露出することになった井手上さんは、臆することなく“ありのままの自分”を発信し続けています。そんななか、井手上さんは性的マイノリティ以外の人々にも配慮しながら、自らの使命に向き合っています。

 

「『どうか理解してください』と一方的に言うのは違う気がするのです。きっと、少しずつみんなが幸せになれるような解決策があるはず。そのために実際に“壁”を感じている当事者として、アイディアを出したり情報発信をしていくのが自分の役割なのかなと感じています」

 

攻撃的にならず、かといって卑屈にもならず、ごく当たり前の事実として自らのセクシュアリティを公表し続ける井手上さん。この自然体こそが、多くの人を引きつける一番の魅力かもしれません。
 

著者プロフィール
井手上漠(いでがみばく)さん:
2003年1月20日生まれ。島根県隠岐郡海士町出身。15歳で第31回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト“DDセルフプロデュース賞”を受賞し脚光を浴びる。以降、数多くのメディアに出演する他、サカナクションのMV『モス』への出演に抜擢されるなど多方面で活躍。現在はモデル業を中心に活動する。
Twitter/@i_baku2020 Instagram/@baaaakuuuu

 

『井手上漠フォトエッセイ normal?』
著者:井手上漠 講談社 1430円(税込)

話題のモデル・井手上漠さんの初フォトエッセイです。フォトパートでは、故郷である海士町で撮影した美麗ショットを掲載。エッセイパートでは、生い立ちや家族、SNSや性など、多彩なテーマを語り尽くします。10代ならではの純粋さと、10代とは思えない俯瞰が入り混じった言葉の数々に、老若男女問わず魅了されるでしょう。


撮影/三宮幹史(TRIVAL)
構成/さくま健太