政府が東京オリンピックの開催期間中、集中的なテレワークを実施する「テレワーク・デイズ」を企業に対して求めたことが猛反発を受けています。コロナ危機の最中であることや、オリンピック開催期間中は混雑が予想されることを考えると、本来は合理的な呼びかけのはずですが、世の中からは批判の声しか聞こえてきません。

総務省の武田良太大臣は2021年6月11日の記者会見で「安全安心な大会を実現するため、より多くの団体にテレワークを実施していただくことが不可欠だ」と述べ、東京五輪・パラリンピックの大会期間中の集中的なテレワーク実施を要請しました。

3月、参議院予算委員会での武田良太総務相。写真:つのだよしお/アフロ

この取り組みには「テレワーク・デイズ」という名前が付けられていますが、2012年のロンドン五輪において、現地企業の8割がテレワークを実施して市内の混雑を抑えたという実例から来たものです。コロナ危機が発生する前からこの取り組みは知られており、多くの人が五輪の開催期間中はテレワークをするのではないかと漠然と考えていたのではないかと思います。

 

ところが実際に政府がテレワークを呼びかけると、国民からは反発の嵐という状況になってしまいました。

当たり前のことですが、日本国民の多くは政府のコロナ対策を評価していません。ワクチン接種が遅れているため、国民は一方的にガマンを強いられており、飲食店はギリギリの状態まで経営が追い込まれています。各地の運動会も軒並み中止となる中、五輪だけは開催前提で突き進み、期間中には外出自粛を強く要請するという話ですから、多くの人が怒り心頭となるのも当然でしょう。

一連の状況は社会的に非常に良くない事態だと筆者は考えています。

コロナ危機においてテレワークが有効であることはほとんどの人が理解しているはずであり、当初は、多くの人がテレワークを進めて欲しいと考えていました。企業の中にはテレワークを行う意思がなかったり、インフラの問題から実施できないところもありましたから、多くの労働者は政府に対してテレワークの推奨を強く呼びかけたり、支援を行ったりして欲しいと考えていたはずです。

ところが政府があまりにも身勝手で、関係者の利益を優先する政策ばかり実施することから、今回の呼びかけに対しては「さらにガマンしろというのか?」という声がたくさん寄せられている状況です。

 
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