私たちアラフォーの常識を覆したヒロインの存在


復讐劇も非常に面白かったですが、女性目線で面白さを語るなら、特に目が離せなかったのが主人公を取り合う女同士の戦いでした。

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ヒロインのポジションであるイソは、インフルエンサーでソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)という超個性的な役どころ。年齢は、パク・ソジュン演じるセロイの10個ほど下です。

 

そしてそのイソのライバルが、セロイの同級生であり、初恋相手のスア。スレンダーなモデル級のスタイルと美しい外見は、同じ女性目線で見てもウットリしてしまうような王道のヒロインタイプです。

しかも完璧なルックスに加えて、どことなく薄幸オーラを漂わせる、いわゆる“放っておけない美女”タイプなのです。

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そんなイソVSスアの戦いについて、「梨泰院クラス」ファンの女性に話を聞いてみると……。

『梨泰院クラス』をきっかけに韓国ドラマにのめり込み、パク・ソジュンのファンクラブにまで入ってしまったという奈美さん(38)も、やはりヒロインであるイソのキャラクターには戸惑ったと語ります。

「イソが可愛らしいし才能豊かなのは認めますが、私の推しは最後の最後まで、ライバル役のスアでした。スアはまさに典型的なヒロイン像。なのに『梨泰院クラス』を見ると、ヒロイン的ポジションはスアではなく、正反対のタイプのイソ。これには少し驚きました。もう以前のように、スアみたいなお姫様タイプがモテる時代は終わったのかもしれません……」

奈美さんと同様に、私もスアを推していました。美しい見た目や完璧なスタイル、どこか放っておけない雰囲気……といった要素は、私のようなアラフォー世代の皆さんが、昔から刷り込まれてきた“典型的なモテ女の条件”そのもの。

それに加えて、大企業でバリバリ仕事をこなすという現代的な女性の要素もしっかりおさえていて、(性格はちょっと難ありだとわかっていても)肩入れせずにはいられません。

スアは計算高くて嫌いだというかたもいるかもしれませんが、保身のために権力に屈してしまうところにも、むしろ同情してしまいます。私たちの世代はどちらかというと個性をグッと抑え、スアのように長いものには巻かれて生きていく……という経験をした人が多いと思います。

恋愛メソッドなんかを聞いていても、自己主張が強すぎる女性は選ばれないとか、男性を立てられる女性がモテる……みたいな偏った理論を耳にタコができるほど聞かされて育ってきました。

だからこそスアがヒロインなのは納得なのですが、天真爛漫で主張が強いイソがヒロインとなると「え? なんで?」と驚きを隠せないのです。

高校生のお子さんを持つ佐知子さん(45)は、スア派かイソ派かで、娘さんと口論になったといいます。

「私から見たら、イソはちょっと個性が強すぎるし色気も足りないので、魅力がまったくわかりませんでした。

でも18歳の娘は“イソのほうが自由で媚びなくて、カッコイイ。スアより断然魅力的でしょ”と言い張るので驚きました。今の時代は、スアのように見た目や条件ばかりがよくても魅力的にうつらないのかもしれません。それよりはイソのように破天荒でも、男性の成功を導くことができる“アゲマン”タイプが求められているということでしょうか」

イソはいわば、次世代における理想の女性像。イソとスアの戦いを見て、私たちがモヤモヤするのは、次世代の勢いに気圧されるようなプレッシャーを感じているからなのかもしれません。

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『梨泰院クラス』が大ヒットした要因のひとつとして、それまで韓国ドラマを見ていなかった若い男女に受けたことが大きいでしょう。

昔の韓国ドラマのように、中高年の女性のみに受けそうなメロドラマ要素だけに留まらず、人生における夢や希望を描いた下剋上ストーリー。さらには、典型的な美女ではなく個性派ヒロインの登場。

『梨泰院クラス』以降にヒットしたドラマを振り返ってみても、『サイコだけど大丈夫』『スタートアップ:夢の扉』そして先日紹介した『ヴィンチェンツォ』など、登場するヒロインは皆(何らかの苦悩は抱えているといえど)強くてたくましく、優秀で自立した女性ばかり。

それらの先駆けとなったドラマ『梨泰院クラス』は韓国ドラマの革命を起こしたと同時に、私たちがこれまで当然のように抱いてきた“理想の女性像”に関する概念を、見事に覆すこととなったのです。
 

後編では、ドラマ中に出てきた韓国料理のレシピを公開中!
『梨泰院クラス』の世界にどっぷり!純豆腐チゲのレシピ【おうちで韓国ドラマごはん】>>
 

構成/山本理沙
この記事は2021年6月25日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

 

前回記事「40歳超えても、恋はできる。アラフォー女に希望をくれた韓国ドラマ「愛の不時着」の底力」>>

 
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