梶芽衣子さんといえば、私にとっては「鬼平犯科帳」での女スパイ、おまさ役のイメージが強い女優さん。無口でミステリアス、だけど強烈な存在感で、その大きな瞳で何もかもを見抜かれてしまいそうな……。「女囚さそり」シリーズでも知られる彼女ですが、まさにこの〝さそり座の女〟的、陰(いん)のオーラが梶さんの魅力ではないでしょうか。最近ではドラマ「きのう何食べた?」で演じた、西島秀俊さん演じるシロさんのお母さん役も印象的でしたよね。

そんな梶さんの大ファンを公言するクエンティン・タランティーノが、2003年に映画「キル・ビル」で、梶さんの代表曲「修羅の花」を劇中歌で使用したのは有名なエピソードです。

そしてその劇中歌を聴いて以来、梶さんのファンだったというアルゼンチンの男女デュオ、「カンデ・イ・パウロ」が、この度、梶さんとのコラボレーションをオファー。7月2日に、カンデ・イ・パウロが所属するデッカ・レコードから、「修羅の花」コラボバージョンが配信されました。

2日に配信がスタートしたシングル、カンデ・イ・パウロ&梶芽衣子「修羅の花」ジャケット

デッカ・レコードは、ローリング・ストーンズやザ・フーなどのスターも所属していたことがあるイギリスの名門レーベル。日本人アーティストがこのレーベルから曲をリリースするのは、キーボード奏者のKan Sano(佐野観)に次いで2人目、女性では初という快挙だそう。

 

ハリウッドセレブではジュディ・デンチ(86歳)やダイアン・キートン(75歳)など、いわゆるシニア世代になっても主演レベルで活躍する女優が増えて来ているけれど、日本ではまだまだ少数。そんな中、74歳で名門レーベルから歌手として世界デビューを果たした梶さんのニュースには、「かっこいい!」と心から希望をもらえました。

©荒木大甫

「修羅の花」は、カンデ・イ・パウロのデビュー・アルバム『カンデ・イ・パウロ』にも収録。『カンデ・イ・パウロ』 発売中 SHM-CD UCCM-1263 ¥2860(税込)

今回、カンデ・イ・パウロと梶芽衣子さんの共同名義でリリースされた「修羅の花」は、小池一夫氏作詞、平尾昌晃氏作曲で、73年に梶さんが主演した映画「修羅雪姫」(このタイトルも何だか壮絶そうで、すごい!)の主題歌だったもの。

スポーツ報知の取材で、梶さんはこの快挙に対し「(日本人)女性で初めて? ちょっと自慢しちゃおうかしら」と語っていたらしく、そんな言葉からも、梶さんのお茶目なパーソナリティが透けて見えるようです。

ちなみに前述のタランティーノ監督は2013年に映画「ジャンゴ」のPRで来日した際、当時65歳だった梶さんと念願の初対面を果たし、終始デレデレで手を握っていたことが。その時、タランティーノは49歳。大監督も憧れの女性の前では単なるオタク少年に戻ってしまうなんて、可愛いですよね(笑)。

梶さんは今回のレコーディングのために、過去の「修羅の花」の音源をレコードショップで自腹で購入、練習して挑んだそうですが、大女優なのに驕らず、若い世代と新しいことにチャレンジする、その精神が素敵。そんな精神の柔軟性が、若々しく輝いている秘密なのでしょうか。


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