とりわけ、女性の権利の名のもとに反ムスリムの姿勢を取る「フェモナショナリズム」が出てきていることへの警鐘は、日本の今後にとっても示唆が多いと思います。いわば、女性であれば誰でもいいというわけではない、ということ。しかし政治家に女性が少ないうちは、女性というだけで、主張がどうであれ、女性の希望の星のようにも見えてしまう可能性があり、それは危険でもあると。

だからこそ数が増えたほうがいいわけですが、そのために重要と思われるのが、ブレイディさんが著書で指摘するもう1つの警鐘です。それは、女性政治家に対する「サイバー暴行」の多さです。

『女たちのポリティクス』によれば、2018年の調査で欧州45ヵ国の女性政治家のおよそ60%が「ネットでセクシスト的、中傷的な攻撃を受けたことがある」と答えており、さらにレイプや暴力、殺人の脅迫にまでエスカレートするケースも。英国の2019年末の総選挙時には、嫌がらせを受けて辞める女性議員の多さがガーディアン紙に掲載され、話題になったといいます。

 

日本でも、Twitterなどを使った女性候補者や議員への攻撃は時に目にあまるものがあり、政治家になりたい人を増やしていくうえで大きな壁になると思います。政治家に対する攻撃に限りませんし、女性から女性に対するもの、男性に対するものもあるでしょうが、こうした「サイバー暴行」への対策は強化していくべきだと思います。

ブレイディさんは、「これまでの常識」を壊していくには、上からも下からも潰していく必要がある、つまり政治家からのトップダウンも、デモなどによるボトムアップも必要で、両方がいがみ合わずに変えていかなくてはいけないとして著書を締めています。

女性なら誰でもいいわけではないけれど、女性の多様性を広げるためにも、女性の割合を増やしていく。選ばれた女性議員全員に賛同するわけではもちろんないけれど、このような観点から、今回は希望を感じた選挙でした。そして女性ゆえに受けてしまう攻撃があるなら「個人がそれくらいタフに乗り切らないとダメ」という姿勢ではなく、手を握り合って断固として立ち向かっていきたいものです。

前回記事「夫婦別姓を認めない日本。国際比較と歴史でわかる、いま本当にやるべきこと」はこちら>>

 
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