近年「毒親」という言葉がクローズアップされ、親から受けた壮絶な被害体験をカミングアウトする人が増えた印象がありますが、「壮絶」とまではいかなくても親からの心の支配に悩んでいる人は多いのではないでしょうか? たとえば、「いい大学に入ったほうがいい」「結婚したほうがいい」などのアドバイスは一見穏やかですが、その意思がない人にとっては苦痛でしかないでしょうし、親に強い愛情を感じている人なら罪悪感に苛まれてそれこそ生き地獄かもしれません。

劇作家の鴻上尚史さんは著書『親の期待に応えなくていい』において、親が子へ無意識に与えてしまう重圧や、子が親に対して感じてしまう罪悪感の原因を突き止め、子供に対して「親の期待に応えなくていい」というメッセージを贈っています。

本書は中高生向けの内容ですが、大人が読んでも頷くこと請け合いです。今でも親の重圧に悩まされている人は心が軽くなり、親として子供と対峙している人には子育ての参考となるでしょう。ぜひご注目ください!

 


「同質性」と「同調圧力」に惑わされるな


あなたには信じられないでしょうが、実は昭和の時代には、NHKの「紅白歌合戦」に出ている歌手の曲を国民の大多数が知っていた、という時代がありました。みんなが同じものを観ているのですから、好みや感覚、考え方はみんな同じになります。昔の日本は、「同質性」がとても強い国でした。

 

「紅白歌合戦」が高視聴率だった昭和の時代、「男は男らしく・女は女らしく」とか「何歳までには結婚しなければいけない」とか「女は学歴があってもムダになる」とか「男はこうしなければいけない」という無言の命令がたくさんありました。「はっきり命令されているわけじゃないけど、なんとなく、みんなと同じにしないといけない」という感覚が「同調圧力」です。日本は世界に比べて、とても「同調圧力」が強い国です。

親子関係は、仲よくすることが絶対に正しいことなんだと、みんな思い込んでいます。でも、「どうしても言いたいことがある」時は、ぶつかるのです。それは、悪いことではないのです。でも、親に従い、親と仲よくすることが、「自分の希望」よりも大切なことなんだとみんな思いがちなのです。

そう思ってしまう原因が、この国の「同質性」と「同調圧力」だということです。ずっと「みんな同じ」世界に生きていたので、それが当然で、そうでなければいけないと思い込んでいるのです。

でも、もう「みんな同じ」時代ではないのです。

それどころか、ますます、みんなの好みや意識、価値観(何を大切にするか)は、バラバラになっていくでしょう。いろんな人がいて、いろんな価値観があって、いろんな方向を目指す人たちがいることです。これからの世界は間違いなく多様性に向かって進んでいくのです。

「親を喜ばせたい。がっかりさせたくないから」といって「親の期待」に無条件で従うことはないのです。