それだけでも相当悩んでいるのに、わが子が思うように伸びないとなると、ストレスで爆発したくなるのも当然です。すべてを投げ出したくもなるでしょう。しかし、ほとんどのお母さんは実際にはそうせず、ひるむことなく働き続けます。

でも私は思います。そんなときは一度投げ出しましょうよ。そして、自分を取り戻す時間を確保しましょう。

 

例えば、休日、子どもの世話は夫や実家に頼んで出かけてしまい、1日を全部自分のために、自分が気持ちよくなるためだけに使う。有給休暇が使えるなら、自分の好きなことのために計画的に休むのもいいでしょう。実は、私は定期的にやっていました。なぜって、それほど親、特にお母さんの心の健康は、子育てにおいて大切なものだからです。

女性が働きに出るようになって、仕事だけでなく、家事も育児もこなす“スーパーお母さん”が急増。一方で本来おおらかだった日本のお母さんが追い詰められ、心にも時間的にもゆとりがなくなっているのも事実です。そのことで、お母さん方から笑顔が消えているのなら、それは子どもの心を不安定にする大きな要因になります。それはまた子どもの向上を阻害し、夫の意欲を奪い、家族全体の士気を下げてしまいます。

心が健康なお母さんは、家庭においては太陽のような存在です。だからこそ無理なく輝いていてほしいし、そのためなら自分ファーストであってもいい。

家族の心の動きを察するには、自分自身に心のゆとりがないとできません。お母さんが家庭の事務局長として、しっかりマネージメントしてこそ家庭は安定します。そのためにお母さんには自分をもっと労ってほしいのです。

 


著者プロフィール
隂山英男(かげやま・ひでお)さん:
1958年兵庫県生まれ。兵庫県朝来町(現朝来市)立山口小学校在職当時、百ます計算やインターネットの活用等により学力向上の成果を上げる。2000年10月にNHKテレビ「クローズアップ現代『学校は勉強するところだ〜ある公立小学校の試み〜』」で取り上げられ、大きな反響を呼ぶ。公募により2003年4月から広島県尾道市立土堂小学校の校長に就任。以降、「基礎・基本の徹底」と「早寝・早起き・朝ごはん」に代表される生活習慣の改善による学力向上運動に取り組む。「百ます計算」に代表される「徹底反復シリーズ」は累計800万部超のベストセラーに。2006年4月から立命館大学教育開発推進機構教授。2017年3月退職後、教育クリエイターとして活躍中。全国各地で学力向上アドバイザーを務める。一般財団法人基礎力財団理事長。NPO法人日本教育再興連盟代表理事。徹底反復研究会代表。2021年度より、これまでの実践の総まとめとなる、オンライン学習システム“K-GYM”をリリースする。

 

『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』
著者:隂山英男 SBクリエイティブ 990円(税込)

「百ます計算」でも知られ、学力向上のエキスパートとして活躍する著者。数多くの親子と向き合う中でわかったのは、親が幸せになることの重要性でした。子どもを「自力で生き抜く人間」に育てるために、親は自らの人生とどう向き合うべきなのか。著者の力強いメッセージの中に、共感と発見があふれる一冊です。


構成/金澤英恵