なぜ「喜ばれる人」になると成功するのか?

 

永松さんが飲食店を開業したばかりの頃、たつみさんはスタッフの誕生日を盛大に祝う永松さんたちの姿を見て、お客様も同じようにお祝いした方がいいと提案します。永松さんは「効率が悪すぎる」と却下しますが、たつみさんは負けじとカウンターパンチを繰り出すのでした。

「でもね、非効率なことだからこそ感動するんじゃない」

「『私1人のためにここまでしてくれたなんて』そう思ったときに感動が生まれる、そんなものなの。他のお店がめんどくさくてやらないことを一生懸命考えてみたら?」

実際、たつみさんが営むギフト屋は手の込んだラッピング、お客さまへの手書きの手紙、1人のためだけに起こす仕入れといった「非効率」だらけ。しかし、それが口コミで広まり、事業を成功に導いたという経緯がありました。だからなおさら、永松さんはたつみさんの意見を無視できなかったのです。

後年、いろんな成功者の成功法則を見聞きした永松さんは、それぞれ言い方は違っても同じ意味に帰結することに気が付きます。それは母たつみさんの口癖でもあった

「喜ばれる人になりなさい」

ということでした。よくよく考えたらこの言葉は人間の心理そして真理を突いた言葉であったと永松さんは振り返ります。

「ビジネスもそう。友人関係もそう。コミュニティーだって、エンターテイメントだって起業だってすべてそう。自分を幸せにしてくれる人のところに人は集まる。当たり前だ。そもそもすべての人は幸せに向かって生きているのだから。それが人間、もっと大きく言えば動物すべてに備わった本能だ。不幸な方向にみずから身を任せる人などこの世にはいない」

たつみさんは2016年にこの世を去りましたが、永松さんは彼女が遺した以下の言葉を今も胸に刻み、さまざまな活動に精力的に取り組んでいます。

「もらった才能や勲章は決して自分をいばらせるためにあるんじゃない。その力を使って誰かに喜ばれるためにあるもの」
 

 


著者プロフィール
永松茂久さん:株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。2001年、わずか3坪のたこ焼きの行商から商売を始め、2003年に開店したダイニング陽なた家は、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店になる。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。2016年より、拠点を東京麻布に移し、現在は執筆だけではなく、次世代育成スクールである永松塾、出版コンサルティング、イベント主催、映像編集、ブランディングプロデュースなど数々の事業を展開する実業家である。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部という記録を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売り上げで2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同じく『人は話し方が9割』が「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にて、「特別賞/コロナ禍を支えたビジネス書」を受賞。著書に『人は話し方が9割』(すばる舎)、『在り方 自分の軸を持って生きるということ』(サンマーク出版)、『30代を無駄に生きるな』『20代を無難に生きるな』『影響力』『言葉は現実化する』『心の壁の壊し方』『男の条件』『人生に迷ったら知覧に行け』(きずな出版)、『感動の条件』(KKロングセラーズ)など多数あり、累計発行部数は200万部を突破している。

 

『喜ばれる人になりなさい 母が残してくれた、たった1つの大切なこと』
著者:永松茂久 すばる舎 1540円(税込)

毎年1万人を集める飲食店の経営者を経て、ビジネス書でも成功を収めた著者が、母から教えられた「人生で大切なこと」を、その言葉を交えながら回顧します。昭和の母の優しくてたくましい姿に懐かしさを感じつつ、現在でも十分通用する教育法を学ぶことができるでしょう。



構成/さくま健太