夫でもない、子どもでもない。独身女性が愛情を注ぐもの

 

「3回目のデートの帰り道に、結婚前提に付き合ってほしいと告白されました。一緒にいて楽しいし、気も合う。交際は絶対うまくいきそうだし、若い頃なら間違いなく、とりあえず付き合ってみたと思います。

……だけど彼は、できるだけ早く再婚して子どもが欲しいと思っている。私はそれに応えられるか自信がなくて。彼の人生を無駄にはできないので、そんな状況で無責任に前向きな返事はできませんでした」

これを機に、今の自分が“本当に結婚したいのか”“家族が欲しいのか”を真剣に考えるようになった舞子さん。

 

「一生ひとりで生きていく勇気はあるか?と聞かれたら、正直、答えはNOです。だけど、絶対に家族が欲しいか? と考えたときに、気づいたことがあるんです。

私は夫や子どものために生きるよりも、私自身の夢を叶えたい願望があることに気づきました。結婚していた頃は元夫のことが本当に大好きで、彼のためだったら自分の時間をどれだけ犠牲にしても構わなかった。家族のためなら自分のやりたいことは後回しにしようと思っていました。

でも離婚して自分だけの時間を過ごすようになって、諦めていた“独立して成功する”という夢に向かってもう一度努力し始めました。ずっと忘れかけていた青春を取り戻したような不思議な感覚ですが、今はそういう気持ちを大切にしたいなと思っています」

もともと舞子さんは企業に所属し、WEBデザイナーとして働いていました。離婚を機に、諦めていた夢を再び追いかけようと決意し、独立して事務所を開業したのが約1年前。舞子さんにとっては、この事務所が子供同然なのだとか。

現在は仕事に充実した毎日を過ごしながら、時々男性とデートもしているそう。

「デートはしたいし、恋愛もしたい。だけど結婚が絶対したいかと言われると、そうでもないことに気づきました。だから『婚活』はやめました。

彼氏はいてもいいなあと思うので、出会いの場に誘われたら顔を出すこともあるし、マッチングアプリも退会はせず時々気晴らしに見ています。

もう二度と結婚はしない! とまで言うつもりはありません。私は調子のいいところがあるので、またすごく好きな彼氏ができたら、うっかり再婚したいと思ってしまうかも(笑)。そうなったらその時は、ただ自分の気持ちに正直でいればいいかなって」

婚活をやめた、と自身にも周囲にも宣言することで、一気に肩の荷が下りたという舞子さん。以前のように友人から「婚活しないの? なんでしないの?」と言われたときは、どう返しているのでしょうか。

「結婚したい気分じゃないから婚活はやめた、ってハッキリ答えています。それでもいろいろ言ってくる人はもちろんいますけど。

婚活したから幸せになれるわけじゃないっていうのは、少なくとも離婚を経験した自分だからこそ胸を張って言えますね。だって実際、一生懸命婚活して一度は結婚したけど、結局別れてますから(笑)」

そう語る舞子さんは、言葉こそ自嘲的ですが、表情は晴れ晴れとしていました。


「婚活」という単語が初めて使われたのは、2007年だと言われています。現在ではすっかり定着した言葉。ですが同時に私たちは、「努力してでも結婚しなくてはならない」とどこかで押し付けられているような気がしてならないのです。

結果的に結婚してもしなくても、その圧から解放されたときに、私たちは楽になれるのかもしれません。舞子さんの笑顔がそう物語っている気がしました。
 

構成/山本理沙