「女の敵は女」という通説にも男の影あり

 

奥田さんは女性間のパワハラにも男社会の影響があると説いています。女性上司が、男性よりも女性の部下に手厳しく対応する現象は、女王蜂がライバルとなるメスと敵対する習性から「女王蜂症候群」と呼ばれていますが、奥田さんは「女王蜂」問題が水面下で広がりつつあることを、取材を通して目の当たりにしたそうです。

 

「男性と同等の働き方を志向する女性と、女性の特性を生かして企業社会を生き抜く女性。仕事を続けるために結婚・出産など私的領域を犠牲にしてきた女性と、両立支援策を活用して私的領域を重視して就業継続を図る女性──などそれぞれのタイプは一様ではなく、対立する女性同士の関係性も立場が同じまたは近いライバル関係もあれば、『女王蜂症候群』に見られるような上司・部下、先輩・後輩などの上下関係もある。このような対立構造が女性全体をまとまりにくくし、男性主導の企業社会に対抗できず、結果、女性を不利な立場に追い込んでいるともいえる。皮肉なのは、一枚岩ではないにもかかわらず、女性の多くが男性からの評価を得るための争いに陥ってしまっていることだ」

確かに、「キャリアか子育てか」と二者択一で考えること自体がすでに「男性主導の企業社会」に取り込まれているといえるでしょう。奥田さんが取材した女性管理職による女性部下へのパワハラにも「男社会」の影が見え隠れしていました。

「女性部下へのパワハラ行為に至った背景にも、女性の生き方に対する社会、他者からのジェンダー規範の押しつけがあった。子育てしながら働き、管理職を目指す女性部下に対し、仕事のために『結婚も出産も諦めざるを得なかった』自身を規範に沿えていない“逸脱者”と捉え、苦しんでいたからである」