子育て共同体の提案は原点回帰現象!

Netflix『世界の"今"をダイジェスト』公式ホームページより。

この『世界の"今"をダイジェスト』は、「仮想通貨」や「男女間の賃金格差」、また最新の配信エピソードですと「王室」など、様々な社会現象を取り上げ、その背景や真偽、そしてこの先どう変化していくのかなどを追跡している解説ものドキュメンタリーシリーズです。既に32エピソードが配信されていますが、この中に「一夫一婦制」という興味深いテーマのものがあります。そしてこの「一夫一婦制」で述べられていることは、『#家族募集します』で蒼介が提案している子育て共同体と驚くほど重なっているのです。

そもそも論ですが、親だけが自分の子供を育てるというシステムは、一夫一婦制度の元に成り立っています。この一夫一婦制を番組内では“モノガミー”と言っているのですが、実はモノガミーが定着したのは人類史上において比較的新しいこと。約30万年以上の歴史の中で、農耕が広まった1万2千年前ぐらいからだとされています。

ではそれまでの狩猟時代はどうだったかというと、物も人も全てが共有されていたはずだ、と番組は述べています。それはつまり、性的パートナーも共有されていた、ということ! 実際、大航海時代の頃は、ヨーロッパ以外の場所ではまだまだモノガミーを取り入れていない部族が多くいたよう。ある部族などは、女性が妊娠中に複数の男性と関係を持った場合、全員が父親として子を養っていたそうです。このシステムは何が良いかというと、一人の子を複数の父親が養うことになりますから、その子は圧倒的に守られる度合いが高くなる、ということ。そうすると、子供は無事に大人になれる可能性が高まるのです。

 


子どもを守り育てることを最優先とする
新・共同体は生まれるか?

 

『#家族募集します』の第1話で礼は、突然職場から呼び出しを受けるものの、彼女には娘を見てもらえる知り合いがいません。もしここで仕方なく5歳の娘を一人置いて行ったとしたら、そしてそういったことが何度も起こるようでしたら、やはり礼の娘は、多くの養い手がいる子供より無事に成長する確率が下がってしまうでしょう。礼は「できる限り一人で頑張りたい」という信念の持ち主です。その責任感には敬意を払いたいと思いますが、だからといってそれは決して理にかなった考えである、とは言い難いようなのです。


「父親が誰か」は重要ではない世界
 

またモノガミー以前の時代は、当たり前ですが女性も自由に複数の男性と性的関係を持っていました。でもそうすると、父親が誰か分からなくなる……。今、そのように思った方は多いのではないでしょうか? だけどモノガミー以前の時代においては、それは重要なことではなかったのです。なぜなら子供は、部族全体で育てていたから。たしかによくよく考えれば、子供が泣いているとき、現代のようにわざわざ「あなたの子供が泣いてるよ」などと親を呼んだりするのは若干非効率と言えるでしょう。そんな面倒なことをしなくても、近くにいる大人が対応したほうが早いですから。大航海時代の記録には、イエズス会士がある部族の男性に「妻を自由にさせて、どうやって自分の子だと分かるのだ?」と尋ねているのですが、それに対して彼は「あなたたちは自分の子だけを愛するが、私たちは部族の子を愛するのだ」と答えたそう。興味深いと思いませんか!? まさに蒼介がやろうとしている、子育て共同体の基本理念に近いものを感じます。