現在、オリンピックと並行して絶賛放送中の夏ドラマ。医療もの、警察もの、恋愛ものといったオーソドックスな題材が多い中、私が注目したのが、唯一毛色が違う『#家族募集します』です。

毎週金曜夜22時スタート。『#家族募集します』公式HPより。

物語は、そのタイトルからも分かるように家族もの。昨今、新しい家族のカタチを描いたドラマは私たちに多様な視点を授けてくれることもあり、時代に上手くマッチすると社会現象となるほどヒットすることも少なくありません。ですが、その多くは『逃げるは恥だが役に立つ』、『私の家政夫・ナギサさん』、『義母と娘のブルース』など、どちらかというと女性の生き方に絡んだものに勢いがありました。そんな中でこの『#家族募集します』が興味深いのは、結婚の在り方でも親子関係でもなく、“子育て共同体”という全く新しい提案をしていることです。

 
『#家族募集します』のあらすじ
3ヵ月前に妻を亡くしたばかりのシングルファーザー・俊平(重岡大毅)は、5歳の息子を抱えて奮闘中。常に明るく振舞っていますが、実は息子に母親が死んだことを伝えることができず苦悩しています。そんな俊平を見て、幼なじみの蒼介(仲野太賀)は奇想天外な提案をします。それはSNSで家族を募集し、自分が働くお好み焼き屋「にじや」の2階で、子育てをシェアしながら一緒に暮らそう、というもの。戸惑う俊平でしたが、早速シングルマザーの教師・礼(木村文乃)から5歳の娘を預かってほしいと連絡が。さらに、シンガーソングライターを目指しているめいく(岸井ゆきの)が現れたかと思うと、6歳の息子を置いて姿を消してしまう。母親に置いていかれた過去を持つ蒼介は激怒するのだが……、という展開です。
 


ワンオペ育児の厳しすぎる現実
 

このドラマを見ていて感じるのは、身内の助けが借りられない環境で、仕事をしながらワンオペで育児をしていくのはあまりにも過酷だ、ということ。教師をしている礼は、突然の学校からの呼び出しに娘を預ける人が見つからず、究極の選択で怪しげな蒼介のSNSメッセージにすがるわけです。まためいくも、子供のことは大切に思っているものの、夢を追いかけることと子育ての両立ができず、子供とも真っすぐ向き合えなくなってしまっているのが実情です。比較的定時に終わる仕事で何とかなっていそうな俊平も、妻の死という悲しみを一人で背負っており、精神的には完全に限界がきています。

そんな3人の親たちを救うのが、子供時代の経験から人一倍家族というものに憧れを抱いている蒼介です。最初は抵抗していた俊平や礼も、困ったときに子供を見てくれ、食事を用意してくれる人がいる環境に現実的な利便性を感じ、だんだんと居心地の良さを覚えるようになっていきます。

実は昨今、このドラマのように、「家族のカタチは結婚だけではない」という論説は様々なところで聞かれるようになっています。不特定多数の人が一緒に暮らすシェアハウスや、女性同士が支え合うシスターフッドなどもその一環として注目を集めていますが、まだまだカジュアルな子育て共同体となると、浸透してきているとは言えない状況でしょう。だけど人々の孤立が社会問題となっている今、実はこの子育て共同体こそもっとも必要とされている家族のカタチと言えるかもしれません。

では、具体的になぜ子育て共同体がお勧めなのか? それを、ネットフリックスのドキュメンタリーシリーズ『世界の今をダイジェスト』を引用してお話させていただきたいと思います。