我慢強さはもはや美徳ではない

 

ストレスに適応することに苦しんでいる人には、「この程度で弱音を吐いてはいけない」と我慢してしまうケースも多く見られます。とくにまわりを気づかう方や責任感の強い方、あるいは自尊心の強い方や反対に自信のない方は、人に悩みを打ち明けることが苦手だったり難しいと考えたりする方が多いようです。

ストレスを強く感じたら、できるだけ早く、少なくともストレス状況を回避するようになる前に、周囲の人に相談しましょう。胸のうちを誰かに話すだけでも心の重荷が減り、楽になるものです。また、周囲の人に相談することで具体的なサポートを得られたり、環境を調整してもらえたりすれば、それだけストレス状況に適応しやすくなります。

もしも、転職や異動をしたばかりでまわりに信頼して相談できるような人がいなかったり、みんな忙しくて支援を得られにくい環境だったりした場合はカウンセラーに、あるいは、すでにときどき欠勤するなど回避がはじまっていたりするような場合には、心療内科や精神科の専門医に相談することをおすすめします。

キャリアや処遇上の不利益を心配して、医療機関にも相談することをためらう方が少なくありません。そのため、強いストレスにさらされて症状が深刻化してから受診されるというケースがよく見られます。適応障害は慢性化させてしまうと、うつ病などの大きな病気を引き起こしてしまう可能性もありますから、思い当たる症状があれば、回避が強くなる前に専門医に相談することをおすすめします。
 

 


著者プロフィール
勝 久寿(かつ ひさとし)さん:人形町メンタルクリニック院長。医学博士。精神科医。1967年生まれ。1992年、旭川医科大学を卒業後、北海道大学医学部附属病院麻酔蘇生科で研修。1995年に東京慈恵会医科大学精神医学講座に入局して高度先進精神医療に従事。2004年に人形町メンタルクリニックを開設。精神保健指定医、精神科専門医、臨床精神神経薬理学専門医、日本医師会認定産業医、日本精神科産業医協会認定会員。行政機関や企業のストレス対策についての研修やメンタルヘルス相談に尽力している。著書には『「いつもの不安」を解消するためのお守りノート』(永岡書店)がある。

『「とらわれ」「適応障害」から自由になる本 ―不透明な時代の心の守り方』
著者:勝 久寿 さくら舎 1650円(税込)

うつ病とは異なるストレス反応として注目される「適応障害」と、その原因となる「とらわれ」が生まれるメカニズムおよびその対処法を、精神科医として多くの患者を診てきた著者が詳しく解説。情報過多でありながら価値観が偏りがちなネット社会に警鐘を鳴らしつつ、現代人がストレスと上手につき合うためのヒントをくれます。



構成/さくま健太

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