数々の女性ファッション誌で活躍するスタイリスストの井関かおりさん。運動とはほぼ無縁だった彼女がこの1年で「山登り」が趣味になった理由を語ります。


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ステイホーム中に日課にしていた散歩が山登りのきっかけ

 

ハイキングや山登りをするようになったのは一年前くらい。昨年4月の緊急事態宣言で仕事もキャンセルになり、ずっとステイホームの日々。少しくらいは動かないけないなと思って、近所を散歩することを日課にしました。最初は目的もなく歩いていましたが、ただ歩いていてもつまらないので、せっかくならと大きな公園や庭園を目的地にするようになったんです。春から初夏にかけての時期だったので、花や木々がとてもきれいで。歩いた先に目的ができたことで、日々の散歩がより楽しみになりました。

友人に散歩しながら庭園を巡っているという話をしたら、山のほうがもっと自然がきれいだよとハイキングに誘われて、行ってみることにしたのが最初です。声を掛けてくれた友人を始め、ハイキングや山登りを趣味にしている友人知人が周りにいて、以前から話は聞いていたし、たまに誘われてはいたのですが、運動も好きじゃなかったし、何より山登りのファッションがまったく受け入れられなくて! 山のファッションといえば、派手な柄のピタピタしたレギンスにショートパンツを合わせた”山ガール”しか知らなかったので、「私にあの恰好は無理……」だとずっと思っていました。そのことを友人に話したら初心者が行くところは普段着で大丈夫だと言われたので行ってみることにしたんです。


初の”山ファッション”は着慣れたトップスとスニーカーで

 

トップス/スナイデル パンツ/ブラックブリック ハット/ハロ・コモディティ バッグ/ロウロウマウンテンワークス シューズ/ナイキ

最初に行ったのは、山梨県の西沢渓谷というところ。服装は、ボトムこそアウトドア用の黒のパンツにしましたが、トップスも普段から着ていたものだし、足元も普通のナイキのスニーカー。初心者向けのコースだったので、これで十分でしたが、ひとつだけ後悔したのが、羽織りものを持っていかなかったこと。できるだけ身軽にしておこうと荷物を最小限にしたので、上の写真以上のものは何も持って行ってなかったんです。幸い夏だったので、それほど寒くはなりませんでしたが、汗もかくし、寒暖差もあるので、羽織りは必要だったなと学びました。そしてトップスも汗に強い機能性のあるものにするか、着替えを持って行ったほうがいいなということも。

そして、この後、いろいろな山に行くようになって思ったのは、けがをしないためにも靴はやっぱりアウトドア仕様のものが安心だし、パンツも丈夫な高機能なものがいい。あとはかなり本格的な登山でなければ、普段使っているもので十分だなというのが今のところの実感です。帽子やトップスなどは、いわゆる普通のアパレルブランドでもUVカットや撥水機能付きのものを出しているので、そちらを使うこともあります。

実際に行ってみてわかったのは、私が思っていたような”山ガール”なファッションじゃなくて大丈夫だし、あのファッションをしている人はほとんどいないということ(笑)。

少し話が逸れますが、イメージのせいで敬遠してしまうことってあると思っていて。私の場合、山登りと同じ理由で、ピタッとしたレギンスが嫌でヨガもやってみようという気が起きません。実際にはもっと違う恰好でヨガをされている方もいると思うのですが、ぱっと思い描くヨガってレギンスにブラトップのようなファッション。何かを始めるときは形から入ることも大切なので、その”形”にもっと選択肢がわかりやすくあるといいなとよく思っています。


山登りやハイキングは”ご褒美”がある運動

 

話を戻して、山登りにハマった理由ですが、”山ガール”ファッションじゃなくていいことがわかったことと、登った先にある景色が本当に美しいことが大きいと思います。最初に行った西沢渓谷なら滝。翡翠のような色の滝を眺めていると清々しい気持ちになって、リフレッシュできました。

西沢渓谷で撮影したもの。うっそうとした木々の中に美しい滝が見える。

さらにまだご褒美があって、それは山を下りたあとの温泉とビール。これがまた本当に格別!  年齢も年齢だし、多少は運動しないと思ってジムに行こうと思ったこともあったんですが、ジムだと動いてただつらいだけ。その先にご褒美がないから、運動嫌いな私には続かない。でも、山登りはいろいろご褒美が待っている(笑)。初めてハイキングしてから1年以上、時間を見つけては山に行くようになったのは、このご褒美があることが大きいんじゃないかなと思っています。

神奈川県の丹沢湖近くにあるミツバ岳で見られるミツマタの花。

どの山や渓谷も季節ごとに見せる景色が違います。その時期にしか見られない花などもあるので、それを調べて、行く場所を決めるのも楽しみのひとつ。たとえば、神奈川のミツバ岳のミツマタは3月下旬から4月上旬にしか見られない花。それも山頂付近に咲いているので、登らないとみられないというのも、いいご褒美でした。

遠出して訪れた高知県の仁淀川。仁淀川は「水質が最も良好な河川」に何度も選ばれる河川で、その美しい水色は「仁淀ブルー」と言われている。

なかなか今は難しいですが、旅の理由も山登りで行ってみたいところがある場所へ変わってきました。「仁淀ブルー」と言われる美しい水の色を見たくて高知へ行ったことも。

楽しんで山登りをしていたら、体力もだいぶついてきました。以前は駅の階段を上るだけで息が切れていましたが、今はさっと駆け上がっても息が切れることもなくなりました。あと一年以上続いている理由は、無理をしないこと。楽しいとはいえ、体力は使うので、行くなら翌日がちゃんと休めるタイミングだけ。そして今はアウトドアファッションが充実していて、探すのが楽しいことも後押ししていると思います。山登りをする前は、存在は知っていてもほとんど覗いたことがなかったアウトドアブランドですが、言ってみるとコラボものもたくさん出ていました。普段着るようなアパレルブランドもアウトドアラインを出しているところが結構あって。ご褒美と大好きなファッションを楽しめるということで、ますます山登りにハマってる最近です。

 

次回は、スタイリスト井関かおりさんのおすすめ”山ファッション”を紹介します。


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構成・文/幸山梨奈