他人に迷惑をかけてはいけない──多くの人は子どもの頃から何度も聞かされてきたでしょう。私たち日本人には美徳として受け入れられているこの言葉ですが、実は子どもの健全な成長を阻む「呪い」としても機能してしまう、という怖い側面を持っているようです。

心理学を用いた学習法で数多くの子どもたちを指導してきた坪田信貴さんは、近著『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』において、子のためを思って親が口にする言葉のいくつかは子どもを育てる上で逆効果であった、という衝撃の事実を指摘しています。一体どういうことなのでしょう?

とても気になる本書の中から、「人に迷惑をかけるな」「ほめられて調子にのるな」という、常識として浸透しているこの二つの言葉について触れた部分を中心にご紹介します。

 


「やめなさい」と制限せずに可能性を伸ばすことが大事


僕が本書で伝えたいのは、一言で言えば「『やめなさい』と制限をかけるのではなく、その子に合った可能性を見せること」です。

 

これは教育の本質的な部分ですが、逆を行こうとしているのが現代です。「あれはダメ、これはダメ、もっと空気を読みなさい」と言って、その子の可能性をつぶしてしまう方向に向かっているように見えます。

僕がこの本を書きはじめたのは、ちょうど新型コロナウイルス感染防止のために、1回目の緊急事態宣言が騒がれていた頃ですが、それこそ「空気を読んで自粛しろよ」という圧がものすごいなと感じました。お子さんにも「いいから、外に出るのはやめなさい」「みんな遊びに行くのを我慢しているんだから、あなたも我慢しなさい」と話した親御さんは多かったと思います。コロナウイルスの怖さというより、「空気を読まないと大変なことになるのよ」と言外に伝えていたのではないでしょうか。子どもに伝えるのであれば、「感染者が増えるとお医者さんも大変だし、感染して亡くなっている人もいるよね。〇〇ちゃんはどうする?」「お医者さんもレストランも大変だけど、〇〇ちゃんにできることってあるかな?」などと、この状態に対して、一緒に考えてみるような声かけがいいのではないでしょうか。

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【参考】子どもの可能性を奪う5つの「拮抗禁止令」
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※「拮抗禁止令」……社会の中で生きていくために、幸せに過ごすために、親が子どもに教える必要なルールや価値観。