スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

雑誌をはじめ、さまざまなメディアを通じて皆さんに発信している私が言うのも何ですが……。
どうか、誌面に描かれている女性たちと、ご自身を比べないでください。

 

なぜなら、私自身、そこにとっても苦しんできたから。
離婚や再婚を経て、30代は、長男、次女の出産など、目まぐるしいまでにライフスタイルが変化していました。
同時に、「大草直子」という名前で特集を組んで頂く機会も少しずつ増えていき、確実に、キャリアという部分では波に乗っているような時期でした。
当時は、子供や夫と向き合う時間さえないほど忙しかったし、実際、家事や子育ては夫にお願いし、私が一家の大黒柱として働いていた時期もありました。
3人の子供を育てていかなければいけないから、本当に必死。
ただ、そんななかで関わるのは、
「35歳、共働きウーマン」
「38歳、仕事も家庭も両立しているおしゃれな女性」
「38歳、年収1000万円の都市型独身女性」
などを、ペルソナとして掲げている雑誌でした。 ページ作りに関わっているとはいえ、連れ子で再婚し、夫は主夫で私はフルタイム。どの雑誌の読者像にも当てはまらない自分自身に、どこか居場所がないような、「これでいいのかな?」という気持ちを抱いていました。
いまなら、「そんなことは、他人が決めたフレーム。気にしなければいい」と言えますが、当時の私には、それができなかった……。
事実、そんな苦しさを感じながら仕事をしていくのは、ちょっと違うような気がして、手放していった仕事ももちろんあります。

「ミモレ」では、私が抱いた寂しさや疎外感を、誰にも感じてもらいたくなくて、ペルソナを立てずに創刊しました。結婚していてもいなくても、仕事をしていてもいなくても、子供がいてもいなくてもいい――。
一方で、30代、40代、50代の女性たちが抱く、世代特有の悩みや、焦燥感、もしかしたら諦めのような、ネガティブな気持ちをすくい取っていきたいな、とは思っていました。ただ、メディアを創刊するにあたっては、イレギュラーなやり方です。膨大にかかる製作費をカバーするためには、広告収入は欠かせません。広告収入をしっかり安定させるためにも、メディアにとってペルソナは必要だったりするのですが……。
創刊準備を進めるとき、そんな、ペルソナを立てない理由、「ミモレ」というメディアのコンセプトを、広告代理店へプレゼンテーションに伺いました。すると、「私、頑張ります!」「小さい会社でも必ず広告取ってきます!」と、代理店の女性たちが、目をキラキラさせながら言ってくれるのです。
「ああ、みんな同じように、決められた枠のなかで、もがいているのかもしれない」と、「ミモレ」がやろうとしていることに自信のような、確かな手応えのようなものを感じられた経験でした。
実際、「ミモレ」は、読者のヒエラルキーも作らず、ペルソナも作らず創刊しましたが、本当にたくさんの方が、いま、支持してくださっています。
「ミモレを読んで、生きるのがラクになりました」なんて言葉を頂けることは、私にとって喜びでしかありません。 

みんなが同じである必要はない。

これは、おしゃれについても同じです。
「みんなが持っているから」が、バッグやジュエリーを手にする理由になる必要はありません。
そういう意味では、私は、トレンドとは一定の距離をとったほうがいい、とさえ思っています。そのほうが、世界は断然、カラフルで豊かに見えると思いませんか?

いま、運営している「アマーク」でお伝えしたいのは、そんなメッセージ。誰かと比べたり、世間のものさしや価値観に合わせるなんて、意味のないことだ、と。決めるのはあなた自身であるべきで、ダメな自分も含めて抱きしめてください、ということ。現在はコンセプトディレクターとして携わっている「ミモレ」と比べればとても小さなメディアなので、より、人肌の温もりがある伝え方を、と思っています。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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