十分な睡眠は認知症を防ぐのための重要な要素


ただ、前回の運動の議論と同様、この研究は必ずしも因果関係を示してくれるものではなく、睡眠以外の複数の条件が研究の中で揃えられているものの、未知の第三の条件が作用している可能性も否定はできません。

また、本当に睡眠時間の数字だけで切れるのか、睡眠の質はどうなのかという議論もあるでしょう。同じ7時間でも、ぐっすり眠り続けた人と、途中で起きてしまったりする人では、また異なるのかもしれません。

 

こういった限界を理解しておく必要がありますが、平均すると7時間は睡眠をとるという生活リズムの人が、認知症リスクが低いことと関連していそうだということがこの研究から見えてきます。

 

まだ分からないことも多く残されますが、認知症を防ぐ上で、十分な睡眠というのも重要な要素なのかもしれません。


前回記事「運動が認知症の予防につながるというのは本当か?【医師が解説】」はこちら>>


参考文献
1 Sabia S, Fayosse A, Dumurgier J, et al. Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia. Nat Commun 2021 121 2021; 12: 1–10.

構成/中川明紀
写真/shutterstock


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