全てのキャストがグレーのスーツに身を包み、シンプルな舞台美術にファーストインプレッションで引き込まれた「AMERICAN UTOPIA(アメリカンユートピア)」。

東京では5月末から公開されたにも関わらず、異例のロングラン。公開数は少ないものの、驚くことにいまだに満席という話題の作品です。当初は、スパイク・リー監督・製作というのに惹かれ、下調べもせずに鑑賞。しかし、予想をはるかに超えた素晴らしい作品で、ギリギリになって映画館に駆け込んだのは正解でした。

この公演の最中にコロナが世界を襲い、公演中止を余儀なくされ、今となっては幻の作品。映像となって世界に発信してくれたことにただただ感謝したい思いです。

グレーに統一された衣装は、むしろキャストそれぞれの個性を放ちパフォーマンスが際立ちます。舞台を右往左往に動き回り、圧倒的で独特なパフォーマンス、そしてエナジーを体いっぱいに感じる音楽は観客の誰もがこの世界の虜。終えた後は感動のあまり涙が出ていました。

何より、この舞台の座長 David Byrne(デイヴィッド・バーン)が発するメッセージや言葉がとても深く印象に残ります。彼の哲学までも感じる作品。

デイヴィット・バーンは80年代に活躍したバンド、トーキング・ヘッズの一員で、なんと御歳69歳。舞台上ではシルバーヘアの紳士から考えられないパワー全開ながら、終えた後の穏やかな笑顔は目が♡になるほど素敵で、圧倒的なカリスマ性を感じます。

彼を含めキャスト陣のほとんどは他国からの移民やアメリカ全土から結集。この作品を通して人種や性別を超え「多様性」の世界をリアルに体現。エンターテイメントで世界を救うことも可能かも!とさえ思えた舞台です。

彼が訴える世界は、人種のるつぼと言われるアメリカだけの問題ではなく、この現代社会において、コロナ禍で混迷し分断する私たちへのメッセージのようにも感じました。

彼の世界は「愛」に溢れ、まさにユートピア(理想郷)!