スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

「変わってもいい。だけど、将来どんな仕事をしたいのか一度考えて、そこからどうしたらいいのか逆算しなさいね」
――これは、進路を考え始める年齢になったころ、子供たちに、たびたびかける言葉です。
もちろん、やりたいことなんて変わったって当たり前。ただ目標を決め、そこへ向かっていくために必要なことを考える、そのステップが大切だと思っています。

 

私自身もそうやって高校や大学を選択してきました。高校2年生でのアメリカ留学も、決めた時の思考回路はこんな感じです。
ファッション誌の編集者になりたい。

そのためには、出版社への就職率が高い大学に進学したほうがよさそう。

大学受験に合格するためには、国語は得意。社会は暗記。あとは英語ができたら有利かも! よし交換留学の試験を受けよう! と。環境を変えたかったこともありますが――子供のころから意外と計画的なのです、私。

5年後、10年後にどうなっていたいかを想像し、そのために何をしたらいいのか、それを逆算して考えることは、実はとても大切なことだと思っています。「なりゆきで」「気がついたら◯◯になれていた」はそんなに起こり得ません。
「5年でワンキャリア」――振り返ってみると、私は5年スパンで新しいことにチャレンジしてきました。
そのスタートとなったのは、ちょうど長男を出産したころでした。フリーランスで活動し始めて5年目くらい。ふたりの子供を育てていくためには、スタイリストとして、この先、どうしていくべきかを考えたのです。
スタイリストという職業には、ふたつのタイプがいる。デザイナーやブランドの背景にも精通し、アーティストのように服を組み立てていく職人的な存在と、自身のフィルターを通して親和性のあるファッションを提案していく存在と。――私は、圧倒的に後者に興味がありました。
ならば、自分が前面に出て、ファッションの楽しさを発信するスタイリストになろうと腹を括って、仕事を選ぶようにしました。
それまでは、「どんな仕事も引き受ける」というスタンスでいましたが、親和性を感じられない企画はお断りもしましたし、それまでにやり尽くしたような細かな仕事などは、少しずつ手放していきました。
なりたい私へと進化していくためには、挑戦するための「余白」を残しておきたかったのです。
それからちょうど5年後のお正月、当時お世話になっていた「グラツィア」編集長の温井明子さんに頂いた年賀状に、「今年は大草直子でいくからね!」というひと言が添えられていたのです。それまで褒めてもらった記憶がなかったのであのときの年賀状は、いまでも胸の中の大切な思い出の箱に、大事にしまっています。
何でもやった最初の5年と、スタイリストとしてどうしていきたいかというビジョンを持って邁進した5年。10年という長い下積み期間も、それぞれ違う目線でいたから、着実にキャリアを積むことができました。

その後の「ドレス」や「ミモレ」のスタート期で経験した5年は、ディレクターや編集長として、メディアの全体を見るというひとつのステップでした。「ミモレ」の編集長を3年で辞めると考えていたのも、準備期間を含めて「5年でワンキャリア」が、頭の片隅にあったから、というのもひとつの理由です。
私には、5年という期間がベストでしたが、人によっては3年や10年というケースもあるでしょう。

また、逆算して実行するのは、キャリアに限ったことではありません。ライフプランだってそう。
先日、独身の女性と話していた際、どうしたら結婚できますか? と……。  「いま、彼は?」
「いないのね。何か行動しているの?」
「何もしてない? 1年後に結婚していたいなら、まずは彼を見つけなきゃ。飲み会に行くのでもいいし、婚活でもいい。行動しなくちゃ」
意外と、みんな、この逆算して行動していくということができていないのかなと感じます。
I want toと願い続けている状態は、苦しいもの以外の何ものでもありません。I do、I didと、実現していかないと! そのためには、逆算して、いまできること、すべきことを実践していくだけ。すごくシンプルです。それに、やることが決まれば、心は決まり体は動くはずです。

私もコーディネイトの方法やコツをお伝えするだけでなく、女性たちがもっと「ラクに楽しく生きる」お手伝いをしたいな、と思い始めて3年目。
次のキャリアを迎える2年後に向け、この本の出版もその一つになるでしょう。またいまと違う自分に出会えるかと思うと、考えるだけでワクワクします。


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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