スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

2020年は、どんな人にも等しく変化の多い一年だったろうと思います。私自身のことでいえば、やはり春先に予定していたいくつかのイベントが中止になったり、仕事そのものがたくさんなくなったりもしました。
キャンセルや中止のご連絡を頂くたび、さすがの私も、会社を経営している立場上、ふたりのスタッフにお給料を払っていけるのか、と不安になったりもしました。でも、どの職業もどの立場の人も、少なからずダメージを受けているとき。不安で縮こまるのではなく、やりたかったことを思い切りやってみよう、と過ごしていました。

実際、雑誌の撮影やコンサルティング業務などの、対外的なお仕事は一斉にストップしていたこともあり、自らが運営する「アマーク」に集中することができました。
これまでは、タクシーの中や撮影の合間に打ち合わせをするような毎日でしたが、会社そのものも3ヵ月間ほぼ完全なリモートワークにし、ふたりのスタッフとはZoomでじっくりとオンラインコミュニケーション。3人という規模の小ささは、リモートでも円滑にコミュニケーションが取れ、かえってよかったのだとも気づきました。

 

同時に、「おしゃれをする」ことが、この世界にとって、人々にとってどういうことなのか、と深く考える機会でもありました。
日本だけでなく、世界中が大変な状況のなか、目の前の命を救う仕事や、人々の生活を支える仕事には、到底及ばない自身の仕事に関して、「これまでプロとしてやってきたことは何だったのか」と落ち込んだりもしました。けれど、ひとりひとりが、頂いたこの命を豊かに、色鮮やかに生き切っていくためには、おしゃれは絶対に欠かせないものだろう、とも思い至りました。
そして、「そんなカラフルで豊かな人生を、ひとりひとりが享受できるようお手伝いをしていきたい」とも、改めて感じました。

また、大きく変わったのが家族との時間です。それまでは、子供たちとのやりとりは、すべきことを忘れないようにLINEが基本。時間がないし、ほとんど家にいないため、「明日、保護者会のプリントの提出、お願いします」「明日、制服代をください」「今度の土曜日は部活で試合です」……、子供たちの学校に関わるやりとりは、まるで業務連絡のようでした。当然、日々のコミュニケーションに割く時間がほとんどなく、特に10歳の次女には、想像以上に負担をかけていたのだと思います。

そんな生活があの3ヵ月間で、一変しました。
毎日、毎食一緒にテーブルを囲んで食事をする。ただ、同じ空間にいること。気軽に話ができる距離にいること――そんな物理的な距離感が、子供たちにとってはすごく大切で、大きいことだったのだと、改めて感じました。
長女とは一緒に食事を作ったりして、たくさん話をしたし、次女もこの期間を経て、ずいぶんと落ち着いてきたような気がします。
いま、キャリアと子育て、もしくは介護と子育て、仕事と介護などを、髪をふり乱して両立している人に言いたい。
「大丈夫、時間というのは、毎日変わらずコツコツと積み重ねることが難しかったとしても、濃い時間は、ある時期、一気に貯金できるのです」
保護者会にもなかなか行かれない。運動会も子供の出番が終わったら走って仕事に向かう。充分な時間をかけてあげられないことを切なく思っていましたが、タイミングがくれば、こうして濃密なときを過ごすことはできる。これまで目の前を通り過ぎて行った子供たちの成長のタイミングを見逃すことも多く、記憶の記録が目減りしていく感じでしたが、図らずも、また貯金できた気がします。
たくさんの時間を貯金できた分、また新たに私ができること、すべきことにフォーカスして進んでいけたら、と思います。


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
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