スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

私の場合、30代半ばで始めたブログが、おしゃれに関してのスキルを確実に高めてくれました。それは、「写真を撮ることで客観的に見る」という視点を与えてくれたから。
洋服のサイズ感はもちろん、自分にはどんな色、素材、形が似合うのかなど、鏡を見てコーディネイトしていたときとは、少し離れた視点で自分を見つめることで、得られる気づきは本当に大きかった。
写真を撮影して、自分を客観的に見る。――SNSやこれまで出版した書籍でも、自分らしいおしゃれを楽しむためのテクニックとして、ご紹介してきました。「どうやったらおしゃれになれますか?」という質問にも必ず「ふいの瞬間を写真に撮ってください」と言います。後ろ側のパンツ丈と靴のバランスなど、鏡を見ていても気づかないことに気づくことができるからです。

 

私も、ファッションやメディアにプロとして関わるようになり、20年以上が経ちます。まだまだ自分では「中堅」だと思っていますが、クライアントや編集者など、ともに仕事をする仲間が年下の女性ということも増えました。
そんな、30代、40代の方たちと仕事をしていると、皆、一様に悩んでいるのです。これからの働き方だったり、お給料、自分のスキルの見極め方について……。
「今後どうやって働いていったらいいでしょう?」って。
コロナという大変な状況を経て、これからの働き方、生き方に疑問を抱いたり、改めて考えた人がほとんどでしょう。もちろん、私もそのひとり。これからは、きっと、社会そのもの、価値観そのものがドラスティックに変わっていくのだと感じます。そんなとき大切になってくるのは、「自分を商品化し、客観的に見ること」。

フリーランスの後輩や、友人たちとの集まりのなかでよく話すのが、「自分のタイトルを持ったほうがいい」ということです。
それは、〝部長〟や〝課長〟とか、〝編集者〟や〝スタイリスト〟というような肩書ではなくて「チーム同士をつなぐ影の立て役者」とか、「言葉を使ってファッションを紡ぐスタイリスト」みたいに、自分に見出しをつけるというイメージ。
会社員の方も、ご自身がお給料をもらっている=商品としての自分を買ってもらっていると捉え、考えてみてほしいのです。
SNS時代の今、同じようなことが、「ブランディング」とか「セルフプロデュース」なんて言葉で語られたりもしますが、私が考えるのは、それとは別ものです。「見せる自分」ではなくて、自分にしかない強みを見つけていくこと、そして、それをどう社会に還元できるか、ということ。
そのためには、「客観的な視点を持つ」ことが、欠かせません。

・好きなこと
・得意なこと(褒められたり、認められていること)
・お金になること
――3つのことを、ひとつずつの円として考えてみてください。それぞれが重なる部分にあなたのタイトルが隠れているはずです。自分のキャリアがぼんやりしていたり、生き方を探し続けている人は、時間をかけてじっくりと取り組んでみてほしいと思います(ワークライフバランスを大切に、仕事が人生のすべてじゃないと思う人も、ぜひやって頂けたら!)。

私自身も、そうやっていまのキャリアにたどり着きました。
子供のころから好きだったのが、「人に伝えたり、シェアすること」。
そして仕事を通して経験を積んだ得意なことが「ファッション」です。このふたつを繫ぎ合わせて取り組んでいるのが、主宰している「アマーク」であり、ブランドの認知度や売り上げをアップさせるための、コンサルティングやブランディング業という仕事なのです。

好きなことは自分でわかることですが、もしかしたら、得意なことは、人から褒められたり、認められることでしか浮かび上がってこないのかもしれません。
振り返れば私も、「あなたは言葉の人だから」というマディソンブルーの中山まりこさんのひと言だったり、ブログに寄せていただいたコメントや、読者の方からのコメントが、少しずつ「言葉」という部分についての自信になっていきました。
こうして、出会ってきたたくさんの人が、私の強みを見つけてくださったように、これからは私がそのお手伝いをできないかな、とも考えています。彼女たちのスキルが、しっかり社会の役に立ち、その見返りとして対価を頂けるようサポートしたり、スキルと企業をマッチングしたり……。まだ、おぼろげなイメージではあるのですが。

この、自分にタイトルをつけたり、スキルを客観視することは、フリーランスで働く人だけではなくて、会社にお勤めされている方も、専業主婦の方にも同じように言えることだと思っています。この新しい時代、仕事に邁進することだけが「善」ではないのと同様、60歳で会社を辞めて、あとは細々と暮らしていくなんて常識ではなくなっていくことも確か。
私は70歳を超えても現役で、と考えていますが、時間があるということは、可能性があるということ。それなら、可能性の芽を、いまから育んでいったほうが絶対にいい。
自分を商品化して、オンリーワンの仕事やキャリアを積んでいく――そんな時代を、皆さんが軽やかに進んでいけるように、私がお手伝いできることは何なのか。そんなことを考え始める今日この頃です。


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


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