舞台は、一番好きな芝居というものに貪欲でいられる場所

ーー林さん演じる「長男」の役どころについて教えてください。

 

ある登場人物が最後のセリフで、自分たちのことを「世間」と呼ぶのですが、この物語に触れた人は、このセリフからいろんなことを感じ取ると思います。つまり世間と同じように劇中では理不尽なことがたくさん起きますし、この家族も理不尽な人ばかりなんです。その中でも長男は、より“悪”のポジションになるのかな。人を苦しめることに対してすごく直接的というか、攻撃的な要素を持ってる人物だと思います。

ーー林さんにはあまり“悪”のイメージがないですが。

頑張ります(笑)。ただ、自分にないものを演じるのが芝居の醍醐味であり、俳優という仕事の喜びだと思っています。自分とはかけ離れたところで感情を解放する、そういう役は楽しいです。

ーー6年前の「家族の基礎〜大道寺家の人々〜」での初舞台以来、舞台にはコンスタントに出演されていますが、林さん自身は舞台のどんなところに惹かれているんでしょうか。

本読みや稽古の時間が大好きなんです。このままずっと稽古でもいい……というくらい(笑)。前回出演した舞台『フェードル』で(大竹)しのぶさんと初めてご一緒させていただいた時は、所定の稽古時間を超えて役についてお話させていただいて、なんて充実した時間だろう、と。稽古場は、自分が一番好きなお芝居というものに、ものすごく貪欲でいられる場所です。

 

ーー林さんがここまでお芝居の魅力にハマったきっかけは何だったんでしょうか。

最初は、自分の演技を褒めていただいたときに本当に嬉しかったからです。お褒めの言葉をいただいた時は自分で自分を肯定できます。そして、観客の皆さんに楽しい時間をお届けできたと実感できたとき、それ以上に嬉しいことはないです。応援してくださる方々の言葉に救われ続けて、いつからかお芝居そのものを楽しいと思えるようになっていった気がします。