「出会った日とずっと同じ人間」なんていない

 

「“私が知っていることは、あなたが知っていることとは違う”という理解は、効果的なコミュニケーションに欠かせません」
と話すのは、この研究の筆頭著者であり、ウィリアムズ大学で心理学を教える教授ケネス・サヴィツキーです。

 

「この理解があってこそ、何かを指示したり、授業を教えたり、そして普段の会話をしたりできます。しかし相手が親友や配偶者となると、これがあいまいになってしまいます」

これはまるで、誰かとのつながりを一度感じてしまえば、その後も関係はずっと変わらないと思い込んでしまうようなものです。

日々のやりとりや活動の積み重ねが、私たちを形づくります。世間とはこういうものだという自分の理解も、日々少しずつ変化します。ですから、昨日と同じ人はいないし、今日の自分は明日の自分とまったく同じでもありません。意見や態度、信念は変わるものです。

つまり、ある人をどれだけ長く、もしくはよく知っているかは関係ありません。耳を傾けるのをやめてしまえば、その人が何者であるかの理解を失い、関わり方もわからなくなってしまいます。過去を頼りにいまこの人を理解しようとすると、確実に失敗します。

フランス人作家アンドレ・モーロワは、こう書きました。
「幸せな結婚とは、いつでも短すぎると感じられる長い会話のようなものである」
出会った日と同じ人間であるかのようにあなたを扱い続ける人と、どれだけ一緒にいたいですか?

これは、恋愛関係のみならず、あらゆる人間関係にも言えることです。

よちよち歩きの小さな子でさえ、わずか数カ月前の赤ちゃんだったときのように扱われるのを嫌がります。2歳の子が覚えたことを大人が手助けしようものなら、「自分でやる!」と怒ってしまうでしょう。人生のページがめくられるなか、相手に耳を傾けることで、私たちは互いのつながりを保ち続けるのです。