介護離職は負担が増大。「辞めない介護」の道を探ろう


ある程度の年齢になると「もし自分の親が倒れたら……」という不安はつきものです。親が要介護認定を受けた場合には、たいていは体のどこかが不自由になり、判断力も下がっているため、日常生活を1人で送ることは難しくなります。その際に在宅で介護をする人は誰なのでしょうか?

下の円グラフを見ると、介護の担い手として最も多いのは同居の配偶者であることがわかります。つまり、父や母が倒れたら、その連れ合いが面倒を見るのが一般的と言えます。また、子ども夫婦が同居している場合には、子ども夫婦が介護をサポートするケースも多く見られます。その一方で、親の介護を別居の家族が担っている割合も約14%いるのも見逃せません。別居していると介護はできないと決めつけている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではないことがわかります。

※出典:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査」の概況

年老いた親同士で介護をする老老介護は、体力的にも精神的にもとてもきついもの。子どものサポートが不可欠となります。家族みんなで協力し合うことや、外部の手を借りるなど工夫しながら、子ども側からも介護に積極的に参加しましょう。親が1人になって子どもが介護役のメインになるときの準備になります。

 

親が在宅介護を希望している場合、仕事を辞めて介護に専念するべきと考える人もいるかもしれませんが、必ずしも得策とは言い切れません。介護離職した人の負担感の変化を見てみると(下グラフ)経済面での負担はもちろん、精神面や肉体面での負担も増したという結果が見られます。介護離職をすると、経済的な不安感や社会生活と離れてしまった孤立から生まれるストレスなどが増えることもあります。働き方を工夫し、外部サービスをうまく利用しながら、「辞めない介護」を検討することを視野に入れましょう。

※出典:「平成24年度 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(厚生労働省委託調査)


著者プロフィール
池田直子さん:特定社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング所長。2008年「あおぞらコンサルティング」を開所。人事・賃金・退職金制度コンサルティングや労務相談、経営相談などの業務を多数手掛ける傍ら、従業員向けの仕事と介護の両立セミナーや企業向けの介護支援セミナーを実施。企業向けに「企業と介護ドットコム」を運営し、「シニアプランシート」を制作。主な著書に「『介護離職ゼロ』の職場のつくりかた」(翔泳社)などがある。自ら仕事と介護の両立を実践中。

『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』
監修:池田直子/上野香織 KADOKAWA 1100円(税込)

「知っておくと助かる制度や仕組み」「どんなお金が、どれだけかかる?」「介護の方法にはどんな選択肢があるの?」「自分は誰に相談したらいいの?」「知らないと損をする、戻ってくるお金の話」「離れて暮らしながら介護できる?」など。介護に関する疑問や不安を解消してくれる情報を、イラストや漫画、図表をふんだんに使って紹介。働き盛り&子育て真っ最中でありながら親の介護にも直面してしまう40~60代に安心をお届けするガイドブックです。



イラスト/サノマキコ
構成/さくま健太

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