男性指導者に求めるのは
話をしやすい雰囲気づくり


伊藤:ところで、潮田さんはずっとダブルスを組まれていましたが、パートナーとは生理の話をしていましたか?

潮田:特にしませんでしたね。
一緒に練習をしているので、お互いに何も言わなくても、休憩中にお手洗いに行く回数や、いつもより動きが鈍くなっている様子などから、今日は生理なのかなとわかり合えるところはあったと思いますが……。
たまに「今日は生理なんだ」と言ったとしても、それ以上、話が進展することはありません。その後、ミックスダブルスに転向しましたが、男性のパートナーには一度も生理の話はしませんでした。

バドミントン・潮田玲子さんのピル服用体験談「男性コーチ、パートナーと生理を語る難しさ」_img2
 

伊藤:それは、男性に話しても意味がないと思ったからですか?

潮田:それもありますし、相手に気を遣わせてしまうかなと。
でも、もしもペアの間で生理の話ができていたら……。物理的な状況は変わらなくても、掛けられる言葉が変わるだけで、心が軽くなっていたかもしれません。

アスリートって常にギリギリのところで頑張っているし、自分を責める傾向にあると思うんです。
だから、上手くいかなかった時に「仕方ないよ、生理だもん」と声を掛けてもらえたら、精神的にもっとラクになれていた気がしますね。

 


伊藤:男性といえば、コーチや監督など指導者もほとんどが男性です。そのことも、生理の話をしにくくさせている要因になっていたと思いますか?

潮田:それはもちろん、ありますよね。
たとえば、高校時代の顧問の先生は男性で、さらに20代後半と歳が近かったんです。生理のことなんて恥ずかしくて何も言えませんでしたし、体重が増えてしまったことがあって、それも怒られましたね。
高校時代って、ホルモンの関係で太る時期だと思うのですが。

伊藤:最近は、生理にまつわる女性の発信も増えてきて、男性指導者のみなさんも、どのように生理の問題に寄り添えばいいか頭を悩ませているようです。
潮田さんなら、どう接してもらいたかったですか? 何かアドバイスを頂けますか?

バドミントン・潮田玲子さんのピル服用体験談「男性コーチ、パートナーと生理を語る難しさ」_img3
 

潮田:うーん……、まず、男性指導者の方からいきなり「生理なの?」と尋ねることはナンセンスだと思っています。
アスリートとしてはもちろん気に掛けて欲しいところですが、まずは「この人になら話せそう」という雰囲気をつくってほしいですね。

伊藤:なるほど。

潮田:男性だから知らなくて当然、「生理のことなんてわからないよ」と言われてしまったら、こちらも二度と話す気になりません。
だけど、女性の身体の仕組みをきちんと学んでもらえたら、生理の不調を話した際にも「じゃあ少し調整してみよう」と考えられると思うんです。
選手も安心して練習に臨めますよね。

伊藤:生理の話をする前に、信頼関係を深めることが先決ですね。

潮田:そもそも、アスリート自身も、もっと積極的に女性の身体についての知識をつけることが大切。
そしてぜひ、男性指導者のみなさんも、一緒に学んで知識を共有してほしい。そのことが、自然と話しやすさにつながっていく秘訣でもあるのではないでしょうか。

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潮田玲子

元バドミントン日本代表選手 1983年9月30日生まれ 福岡県出身
幼い時からバドミントンを始め、小学生の時に全国小学生大会女子シングルスで全国3位入賞。
中学校3年の時には全国中学生大会女子シングルスで初めて全国大会優勝
その後は、女子ダブルスでペアを組んだ小椋久美子さんとのコンビ“オグシオ”ペアで、
女子ダブルス 全日本総合選手権大会を2004年から5年連続優勝、2007年世界選手権女子ダブルス銅メダル 2008年には女子ダブルスで北京オリンピックに出場 5位入賞
2009年からは、池田信太郎さんとのコンビ“イケシオ”ペアで
全日本社会人大会 優勝、全日本総合選手権大会 優勝
2012年 混合ダブルスでロンドンオリンピックに出場、同年9月に現役を引退。
2014年より、(公財)日本バドミントン協会 広報委員会を務めている。
2021年5月、一般社団法人Woman's waysを設立。
女子アスリートが安心して競技を続けられるよう、生理などの課題に向き合い、寄りそう活動を行っている。

<アスリートが生理にまつわる体験を語る『Talk up 1252』配信スタート>
一般社団法人スポーツを止めるなは『1252プロジェクト』として女子学生アスリートが抱える「生理×スポーツ」の課題に対し、 トップアスリートの経験や医療・教育分野の専門的・科学的根拠に基づき、 教育・情報発信を行うプログラムを推進しています。
その一環として、スポーツを止めるなYoutubeチャンネルでは『Talk up 1252』を 全10回のシリーズで配信予定。トップアスリートをゲストに、 生理とスポーツに関する対話を展開します。
様々な女子学生アスリートに通ずる悩みの一助となる動画、ぜひご覧ください。

配信URL: https://spo-tome.com/1252-top/


文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)

前回記事「痛くても我慢が美徳...不妊治療をしたトップアスリートが痛感した身体ケアの大切さ【大山加奈さん】」>>

 
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