戦略① 1月受験可能な、地方の「お宝学校」を探す


テレワークの普及により、親御さんによっては都心に縛られない学校探しが可能になりました。そこで思い切って転居、それが難しくとも、ワーケーション感覚で頻繁に往来できることを念頭に1月中に受験ができる地方や近隣県も視野にいれて、好きなことに打ち込める学校を探してみるのはいかがでしょう。

例えば佐賀県唐津にある、早稲田佐賀中学校・高校は、共学ということもあり人気上昇中。約半数が推薦で早稲田大学に進学していながら、都内の早稲田の附属・系属校に比べると偏差値は挑戦しやすい穴場校です。寮があり、全国から生徒を集めています。

また、上智福岡中学高等学校は人気の上智大学への推薦枠が30以上ある「お買い得」校。このように地方のカトリック系学校では、上智大学などが実施するカトリック高等学校対象特別入試への推薦枠を大量に保有している学校もあります。

このような視点の中で校風が合う学校を探し、合格することができれば、2月1日以降しか受験できない東京の学校だけで勝負するよりも精神的な負担を減らすことができるでしょう。

 


戦略② 「1日校」を賢く選択する


言うまでもありませんが、2月1日はほぼすべての首都圏中学受験生が挑む天王山。この日こそ、熱望校にもっとも合格しやすい日。理由はシンプル、受験者が分散するから。

例えば人気男子校の芝中学校(東京港区)の、1日の1回目入試偏差値はSAPIX基準で51。一方、4日にある同校の2回目入試は56まで上がります。芝熱望生にとって、1日の芝は「お得」と言えるでしょう。なぜならば、4日入試は、芝第一希望生が大多数の1日入試とは異なり、大勢の「御三家が運悪く不合格だった子」を含めた戦いです。偏差値以上に合格は難しい。

駆け引きを含めた作戦を、大人が率先して数パターン提示しましょう。もし進学したいと思える第一志望の学校に1日入試があるならば、ここで合格をおさえてから、2日以降で実力より上のチャレンジ校を受験するという作戦があることを覚えておいてほしいと思います親が賢く戦略を立てることで精神的な負担を軽減し、希望の学校にぐっと近づくことができるのです。

 


戦略③ 偏差値ではなく、入試問題の難易度から併願を組む


よく言われるのが、「SAPIX中に行くわけじゃない」というセリフ。真意は、いくら塾や模試の偏差値が良くても、本番の傾向にあってなければうまくいかないという先輩からのありがたい伝承です。

ウラを返せば、肝心なのは志望校の入試問題で合格最低点を取ること。「有名中学入試問題集」を見れば、予想以上に学校によって難易度や傾向に差があることが分かります。お子さんの志望校の組み合わせによっては、むやみに難問に取り組む必要はありません。

もしも、効率よく受験勉強をしたいと思うのであれば、偏差値にとらわれすぎず、問題の難易度と傾向をにらみながら併願プランを組みましょう。大学附属校や女子校を中心に組むことで、算数の最高難度の問題を解く必要がなくなるかもしれません。算数の難易度は、難関進学校や難関共学校とそれ以外には大きな差があります。作戦次第で過度な負担を避けられるでしょう。


いかがでしたか。全員が、根性論でがむしゃらに頑張るのではなく、効率よい受験勉強を目指すという視点があれば、少し肩の力が抜けますね。

何よりも、これからの時代、学歴だけがあったとしてそれで生き抜けるとは思えません。本当の目標は、子どもが自立して生きていく力を身につけること。子どもの好き・得意を伸ばす方法は、中学受験で高い偏差値を目指す以外にもたくさんあります。

しかし、ひとたび受験勉強をスタートしてしまうと、そのことをつい忘れて巨大な渦に巻き込まれていくような感覚はきっと覚えがあることと思います。何より、子どもがこんなに頑張ったのだから、少しでもいい学校へ入れてやりたいと思うのが親心。

それでも、そんなときこそ思い出してみましょう。親子で目指したもの、大切にしたいことは何でしたか? 何度でも、そこに立ち返って、またそこから作戦を立てましょう。大丈夫、目的を見失わなければ、作戦はきっと見つかります。

今一度、落ち着いて中学受験を俯瞰し、一息ついてからベストを探っていきたいですね。
 

<東京の中学校&小学校受験のリアルを知りたい方はこちら>

『天現寺ウォーズ』 同録『御三家ウォーズ』著者/佐野倫子
解説/おおたとしまさ

東京の知られざる小学校・中学校受験のリアルを知ることができる、スパイシーエンタメ受験小説。
 

 


構成/山本理沙

 


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