家庭の二酸化炭素排出量は“楽しみながら”減らせる

 

さらに我が家では太陽光温水器を入れました。これは非常に効率がいい。ガス代が夏場は3分の1にまで下がりました。さらに我が家では「ペレットストーブ」を入れています。木材をきゅっと固めたものを「ペレット」と言いますが、これは木材に含まれる「リグニン」という物質が熱で融解し固着することによって作られます。

この仕組みを作ったのが新潟にある「新越ワークス」の製品です。同社が作ったペレットストーブを2台、我が家では使っています。日本のペレットストーブには、それまでろくなものがありませんでした。その中で、世界で一番効率の良い物をつくってくれたのが、その事業を最初に立ち上げた古川正司さんでした。燃料となるペレットには、もともとゴミである木材カスを使用しています。輸入品でなく地域の木くずを使えば二酸化炭素排出のカウントもゼロですし、これが使われることで地域にお金が回っていきます。

そしてその結果、我が家の今の二酸化炭素排出量は、一般家庭の平均と比べて信じられないほど減りました。一般家庭のマイナス78%まで減らすことが現実にできています。そもそも事業系を抜いた「家庭の二酸化炭素排出量」だけで言えば、マイナス45%が達成できればいいのです。我が家はやりすぎですね。でも「産業の二酸化炭素排出量」を減らさなければ人類は生き残れませんが。

あと自動車も二酸化炭素排出量が大きく、ぼくは燃費の良いものに買い替えたのですが、たまたまマツダ自動車が極めて低公害なディーゼル車を開発したのでそれを買いました。ディーゼル車は普通軽油を使いますが、もう一つ使える燃料があります。それは廃食用油から作った「バイオディーゼル」。一般的に発売されていませんが、これを使えるようになればさらに減らすことができます。そうすればもう、わざわざ戦争してまで石油を持ってきてもらう必要がありません。こういう形にすることが可能だということですね。

 

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我が家は、水も井戸を使うことによってまかなっています。水道管とはつながっていません。中国電力の電線にもつながっていません。NTTの電話線にもつながっていません。だけど、十分に現代的な暮らしをしていけるんですね。そしてこれから先、「次の未来をどうやって作るか」というのが我々の課題になってきました。

「知恵を一生懸命しぼっていくことで、次の時代を作っていくことができるかどうか、その境目にいるんだ」と思います。

こういう時代を私たちは楽しんで解決することができる。そのことが非常に大きなことではないかと思っています。
 

著者プロフィール
田中 優(たなか・ゆう)さん

1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和など、さまざまなNGO活動に関わる。2012年末に岡山に移住。2013年5月、電力会社に頼らない太陽光パネルと独立電源システムの生活、「オフグリッド生活」を始めた。2016年、国産無垢材で極力化学物質を使わない「天然住宅」で自宅を建てる。現在「未来バンク事業組合」理事長、「ap bank」監事、「一般社団法人 天然住宅」代表、「天然住宅life」共同代表、「自エネ組」相談役を務める。横浜市立大学非常勤講師。

『地球温暖化/電気の話と、私たちにできること』
著者:田中 優 扶桑社 935円(税込)

地球温暖化の危機を20年以上にわたって訴えてきた著者。最も大きな原因とされる大企業の取り組みだけでなく、地域、家庭、そして一人ひとりにも、できることはまだまだあると語ります。二酸化炭素排出量を減らすには、一体どうすればいいのか。本書では、「ap bank」監事ほか、地球の環境を守る活動を続ける中で見えてきた、さまざまな温暖化対策事例を紹介。未来を守るための一歩を踏み出す、きっかけをくれる一冊です。


構成/金澤英恵