コロナ危機で一時棚上げになっていましたが、ホンダやパナソニックなど、これまで大規模な人員整理とは無縁だった著名企業が続々と希望退職を実施しています。企業にしてみれば、高額な一時金を支払ったとしても、長い目で見れば高賃金の社員にやめてもらった方が人件費を削減できます。おそらくですが、コロナが落ち着いた後には、続々と希望退職を募る企業が出てくると予想されます。

希望退職だけでは十分な人件費削減を実施できなかった企業が次に手をつけるのは、中高年社員の大幅な賃金引き下げでしょう。すでに定年後の再雇用では現役時代の半分から3分の1など、相当な賃金引き下げが行われていますし、役職定年によって50代からすでに大幅な年収低下に直面しているビジネスパーソンも少なくありません。

「45歳定年制」の波紋の裏で、国は生涯雇用を要請。ねじれの中でこれから起こること_img0
 

筆者は、今のタイミングでいきなり定年を引き下げることには反対の立場ですが、定年を引き下げて社員数を減らすと賃金が上がるというのは経済学的な事実です。企業は欲しい人材だけを雇用するようになり、むしろ賃金を上げて、優秀な社員をつなぎとめようとするからです。

 

結局のところ、定年の引き下げや雇用の流動化を実施すると、優秀なビジネスパーソンは引く手あまたとなり、年収も大幅にアップしますが、企業から評価されないビジネスパーソンは失業するリスクが高くなるというトレードオフが生じます。

どの会社でも通じるしっかりとしたスキルを持っていれば、仮に雇用が流動化してもそれほど心配する必要はありません。しかしながら、特定の会社だけで通用するスキルしか持っていない人や、明確なスキル戦略がない人は、雇用流動化時代には厳しい状況に陥ることになります。

政府や企業は基本的にアテになりませから、雇用流動化時代においてうまくキャリア・アップしたいのであれば、しっかりとした専門性を身につけることが必須となるでしょう。一方で、今在籍している企業でずっと働き続けたいと考える人は、支出を減らす工夫を行い、生活をコンパクトにする努力が必要です。賃金の大幅な引き下げが行われても、十分に耐えられる生活をしていれば慌てずに済みますし、次の対策を練る時間的余裕を確保できます。


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