サントリーホールディングス社長・新浪剛史氏の「(定年を)45歳にすれば、30代、20代がみんな勉強するようになり、自分の人生を自分で考えるようになる」(※1)との発言が話題を呼んでいます。

報道によれば、新浪氏は経済同友会でのオンラインセミナーや記者会見で「45歳定年説」を提言されたとのこと。「日本の多くの企業が採用している、年齢が上がるにつれ賃金が上昇するしくみについても『40歳か45歳で打ち止め』にすればよいと語った」(※2)そうで、これを受けてさまざまな意見が噴出しています。

しかしながら企業トップによるこの種類の発言は、今回に始まったことではありません。2019年には日本を代表する大企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長が「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」(※3)と発言したり、経団連の中西宏明会長(当時)が「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れない」(※4)と述べるなどして大々的に報じられました。

 


「45歳定年制」は企業の「リストラ宣告」?
 

さかのぼれば2013年、経済学者で東京大学経済学研究科教授である柳川範之氏は、著書『40歳からの会社に頼らない働き方』で「一生会社を頼りにする時代は終わった」と書かれていました。

いずれの発言も「首を切る」「リストラする」といった意味では決してなく、不確実性が高く、一方で長寿化が進む現代社会において、生き生きと働き続けられるように一人ひとりの自律的なキャリアづくりが大切であるという考えが根底にはあったようです(後日、冒頭の新浪氏もそのように釈明しています)。

こうした企業側の意識の変化と同じく、個人の働く意識も大きく変わってきています。私が共同代表を務める会社ではオンラインのキャリア相談を展開しているのですが、ご利用者数はコロナ前と比べておよそ4倍にまで増えています。なかでも特に40〜50代の女性からのご相談が増えています。

「『正社員で働く』ことを是としてマインドセットされていることから、次の一歩に踏み出せず相談したい(40代女性)」

「市場価値や必要とされる領域の有無などを客観的に捉え、アプローチの方向性を定めたい(50代女性)」

「会社員として今後のキャリアについて悩んでいる(50代女性)」

「経験・年齢を踏まえた自分らしい次の選択・歩み方について、相談したい(40代女性)」

課題や悩みはそれぞれですが、終身雇用の崩壊と働き方の多様化を受けて、これまで通りの働き方やキャリアを続けることに関して疑問を持たれる女性が増えていると感じます。