血管を守ることでうつ病のリスク低下に
また、特に高齢者の場合には、小さな脳梗塞の積み重ねがうつ病の発症と関連している可能性を示唆した報告(参考文献3)があります。大きな脳梗塞後にも、うつ病の発症が多いことも知られており(参考文献4)、脳梗塞を防ぐことで、うつ病の一部を防ぐことができるかもしれません。
このような病態は「血管性」のうつ病という呼ばれ方をすることもあり、血管を守るための治療が、うつ病の予防にも重要な役割を果たす可能性があるというわけです。
実際に、高血圧や脂質異常症の治療を行うことが、うつ病のリスクの低下と関連することも知られています(参考文献5)。
これは必ずしも、この治療だけでうつ病を減らすということが証明されているわけではないものの、他の臓器の健康という側面も合算すると、予防として十分行う価値があると判断することができます。
つまり、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病へのアプローチは、こうした病気を防ぐ可能性も考えられているのです。
また、いざうつ病になってしまった際に、高齢者にも有効な治療法があるということについての理解を深め、うつ病への偏見を減らすという取り組みも、将来的なうつ症状を軽減する可能性が指摘されています(参考文献6)。
実際に、抗うつ薬や心理療法などの治療は、高齢者のうつ病に対しても有効であることが分かっています(参考文献7)。そういったことを理解していただくことが、いざという時にも大丈夫なのだという安心感を生むのでしょう。
自分なりのリラックス法を持っておくことや、生活習慣病をしっかりと治療することは、歳をとってから始めれば大丈夫というものではありません。まだ若いからと放っておかず、若いうちからの積み重ねが重要と言えるでしょう。
前回記事「ゲームも認知機能のトレーニングに。予防の積み重ねが大きな効果につながる」はこちら>>
参考文献
1 Koenig HG, George LK, Peterson BL, Pieper CF. Depression in medically ill hospitalized older adults: prevalence, characteristics, and course of symptoms according to six diagnostic schemes. Am J Psychiatry 1997; 154: 1376–83.
2 Rybarczyk B, DeMarco G, DeLaCruz M, Lapidos S. Comparing Mind–Body Wellness Interventions for Older Adults with Chronic Illness: Classroom versus Home Instruction. Behav Med 1999; 24: 181–90.
3 Sheline YI, Price JL, Vaishnavi SN, et al. Regional white matter hyperintensity burden in automated segmentation distinguishes late-life depressed subjects from comparison subjects matched for vascular risk factors. Am J Psychiatry 2008; 165: 524–32.
4 Robinson RG. Poststroke depression: prevalence, diagnosis, treatment, and disease progression. Biol Psychiatry 2003; 54: 376–87.
5 Alexopoulos GS. New Concepts for Prevention and Treatment of Late-Life Depression. Am J Psychiatry 2001; 158: 835–8.
6 Sirey JA, Bruce ML, Alexopoulos GS, et al. Perceived Stigma as a Predictor of Treatment Discontinuation in Young and Older Outpatients With Depression. Am J Psychiatry 2001; 158: 479–81.
7 Pinquart M, Duberstein PR, Lyness JM. Treatments for Later-Life Depressive Conditions: A Meta-Analytic Comparison of Pharmacotherapy and Psychotherapy. Am J Psychiatry 2006; 163: 1493–501.
写真/shutterstock
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