浅田美代子さんが語る母、恋、そして友情「全部埋まらなくていい。空きがあっても、それも人生」_img5

 

周りからどう見られても、私は私


――浅田さん自身は人からどう言われるとうれしいですか。

なんだろう。えー、わかんない、そんなこと考えたことないですよ。どうしよう。それ、わからないなあ。

 

――人からどういうふうに見られたいか考えたことがないことが、逆にすごいと思いました。

そうですか? え、なんて言われたいですか?

――自分は「優しい」と言われたいです(笑)。

そうか、それはきっと優しくないんだろうね(笑)。

――そうなんです(笑)。自分でわかってるから、「優しい」って言われると安心します。

でも私からすると、そうやってはっきりしているところがえらいと思います。私なんて何にも考えてないから。

――なぜそこについて何も考えていないんだと思いますか。

たぶんそれは勝手に人が決めることって思っているからですね。周りからどう見られても、私は私だから。

――今日お話を聞いていて思ったんですけど、人生が100ピースのパズルだとして、自分はつい家庭、友情、仕事と必要なピースを全部埋めようとしたがるんですけど、浅田さんはちゃんと自分にフィットする形のピースを選んで埋められる人なんだなと思いました。

それは偶然じゃないかな。というよりも、埋めなきゃと思ったことがない。そういうのって埋めようと思って埋められるものもでないし。たとえちゃんと埋められていても、自分で埋められていないと思ったら、そう見えちゃうだろうしね。そうすると、何かしなきゃって焦って間違った方向に行ったりすることもあるじゃない?

だから、変に埋めようとしなくていいと思う。空いているところは空いてるまんまでいい。人と比べたってしょうがないしね。私は常に人それぞれと思っているから。仮に埋まっていないところがあったとしても、それも自分の人生と思えるのがいい気がします。

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浅田美代子 Miyoko Asada
1956年東京都生まれ。73年、ドラマ『時間ですよ』でデビュー。劇中で歌った『赤い風船』が大ヒットし、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞。その後も『寺内貫太郎一家』や『時間ですよ・昭和元年』などの人気ドラマや映画に多数出演。TBS系
さんまのからくりTV』での天然ボケな発言が新たなファン層を生み出し、お茶の間に欠かせない存在となった。2019年には樹木希林プロデュースによる『エリカ38』(日比遊一監督)に主演した。21年映画『朝が来る』(河瀨直美監督)で第30回日本映画批評家大賞授賞式で助演女優賞を受賞。現在は役者業の傍ら、捨て犬、捨て猫、虐待の防止など、様々な動物愛護団体への支援をライフワークとしている。

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『ひとりじめ』
浅田美代子・著 1760円(税込) 文藝春秋・刊

「美代ちゃんが私の人生の語り部になってね」
いつものように、二人でご飯を食べながら会話をしている最中に、希林さんが突然そう言った。
そこにどんな意図があるのかわからずに、驚き、困惑した。
「なに言ってるのよ。それに、希林さんの周りにはもっとふさわしい人がいっぱいいるでしょう? 私なんか、言葉もそんなに知らないし」
「いいんだよ。あなたが私のことをいちばん知っているんだから。気持ちがあれば伝わるんだよ」(本文より)

45年来の親友として、ずっと“ひとりじめ”してきた樹木希林さんとの思い出と、青春の日々を綴る初エッセイ。

撮影/塚田亮平
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
この記事は2021年10月7日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。