インタビューはオーディエンスのためのもの


この「聞くべきこと」とは誰にとっての聞くべきことでしょうか。雑誌やWEBメディアならば、読者であり、テレビなら視聴者、あるいは”世間”みたいなことかもしれません。

インタビューは自分が聞きたいことを聞いて終わりではなく、それをアウトプットして完結します。インタビューは、話を聞かれる人(インタビュイー)と聞く人(インタビュアー)のほかに、それを読む人・見る人=オーディエンスがあってはじめて成り立ちます。もっというと、インタビューはインタビュアーのためものではなく、オーディエンスのためのものです。

一方で、面談やカウンセリングは、話す人と聞く人の二人で完結するものですね。

 

「聞き上手」という言葉があります。面談やカウンセリング、悩み相談など、二人で完結するヒアリングの場合は、相手に気持ちよく話してもらうこと、言葉にするサポートをすることが目的なので、「聞き上手」であることはとても重要です。「うんうん。そうだよね」「大変だったね」「わかるわ」など、肯定や共感のあいづちが大事ですよね。

 

しかし、オーディエンスのためのインタビュー取材では、相手に気持ちよくしゃべってもらうことは、必ずしも最重要ではないってことなんです。インタビューの上手いベテランのライターさんは、話が逸れていたとしても、取材時間がめちゃくちゃ短かったとしても、みんなが今この人に聞きたいであろうことをすっと切り出します。それはつまり、目的意識が取材の場を和やかにやり過ごすことではなくて、アウトプット(原稿)にあるから。インタビューの上手さは、それを読む人にとって価値あるかどうかにかかっているからです。

もちろん、相手を怒らせたり、不快な思いをさせたりしては、言葉を引き出せませんから、最低限のマナーは重要です。でも、相手にしゃべりたいことをしゃべらせるのと、みんなが聞きたいこと聞けることは違います。冒頭の編集長が私にクギを刺したのは、そこを混同して目的を見失うな、ということなんだと思いました。