「この欄に切羽詰まった、緊急ひっ迫度の高い文章を特養の施設長なりケアマネジャー(略称ケアマネ。「要介護」または「要支援」と認定された介護保険利用者、およびその家族を支援する。介護支援専門員)なりにわかっていただけるように記入できなければ三球三振、バッターアウト。文面にも工夫と苦労が滲み出るわけだ」と頭を抱えたりんこさんが、知恵を絞って記入したのは次のような志望理由でした。

 

【問】
本入所申込書に記載した事項あるいは記載項目にない事項等で、特に優先的な入所を考慮する必要がある場合は、その状況についてご記入ください。

【答】
診断確定後5年以内に寝たきりになるという進行性核上性麻痺を患っております。現在、すくみ足がひどく歩行困難な状態です(家の中でも車椅子を使用)。転倒を繰り返しながらも、在宅サービスを利用して独居で暮らしております。
長男、次女は遠方にいて、各自、仕事が忙しく、それも深夜に及ぶため母の介護をすることは難しい状況です。長女も仕事を持っており、母の介護との両立が年々、難しくなってきております。このままでは長女は介護離職しかないと不安を強く持っております。
今現在でも独居は事実上、無理があると家族で大変焦っております。本人は左目もすでに失明している状態ですので、火の取り扱い等も非常に心配です。

りんこさんはこれらの資料を揃え、複数の特養に申し込み。しかし、「今400人待ちですね」「まずは要介護が3以上にならないと、なかなか難しいですね。まあ、いずれにしろ、要介護3になった段階から、3年くらいはお待ちいただくことになるかと……」などと言われ続け、「母が生きているうちは、入所は無理なのでは?」とまで考えるように。

費用が安くサービスも充実している特養は、どこも人気で空きがいつになるかわからない。そこで着目したのが、“特養以外”の老人ホームでした。

 

お金を出せるなら、選択肢は広がるが……


心が折れそうなりんこさんために、ケアマネの友人が「老人ホームの種類」を徹底解説。介護初心者のりんこさんは、実に様々な施設があることをそこで初めて理解することになります。そのレクチャーの様子を少し覗いてみましょう。

●有料老人ホーム
「じゃあ、介護の手が必要ないお年寄りが入る自立型施設の説明からいくね。まず『健康型有料老人ホーム』ってのがあるの。ここがいわゆるホテルのような暮らし方ができる老人ホームだと思ってくれていいわ。設備も豪華だし、食事も美味しいし、クラブ活動も盛んだし、外出も自由。お金持ちが余生を楽しむってイメージかな? ただ、自分が要介護になったら、そこの提携先の介護をやっている有料老人ホームに引っ越しする必要は出てくる。つまり、そこに一生いられる保証はないわけなの。

ちなみに有料老人ホームには『健康型』のほかに、『住宅型有料老人ホーム』『介護付き有料老人ホーム』があるわ。施設内では介護サービスを受けられない『健康型有料老人ホーム』に対して、入居者が依頼した外部事業者が介護サービスを行う『住宅型有料老人ホーム』と施設内で介護サービスを受けることができる『介護付き有料老人ホーム』の2つは、自立型施設ではないけどね」