特養を蹴って有料老人ホームを選んだ理由


種類がたくさんあるだけでなく、要介護度、費用、さらに入所する本人の希望や家族の状況など、複雑な状況が絡み合う施設選び。最終的にりんこさんは、ケアマネ友人のレクチャーとアドバイスを参考に、特養の他に「介護付き有料老人ホーム」にも申し込みを行ったのです。

結果、順番待ちをしていた特養に“入所者のバランス”が考慮されて、運良くお誘いを受けることに成功! さらに介護付き有料老人ホームからもお誘いが! 費用面では「特養に敵うものなし」と考えていたりんこさんでしたが、最終的には自分の家から遠い特養ではなく、無理なく通うことができる「介護付き有料老人ホーム」を選択します。そこには、りんこさんのある思いがありました。

 

「母の嫌なところもたくさん見てきた。ワガママな振る舞いにブチ切れ寸前だったことも数知れない。二度と顔も見たくない! 何度そう思ったことか……。でも、私は母の終の棲家を自分の家の近くにすることに決めた。特養という選択をしたならば、満面の笑みで私に手を振る母の姿を二度と目にすることができないような気がしたのだ」

 

待っているだけでは、向こうからやってきてくれない介護サービス。自分と家族の「こんなはずじゃなかった!」を少しでも減らすためには、たくさんの情報の中から、自分たちにふさわしい介護の形を取捨選択していくことが大切なのかもしれません。介護初心者が迷子にならないよう道を照らしてくれる本書を、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

※本書は2015年5月に刊行された初版に加筆修正し、新たな情報を追加して再編集した増補改訂版です。本文中の話は2015年当時の出来事ですが、法律上の変更点については2021年7月現在の情報を記載しています。

著者プロフィール
鳥居りんこさん

作家&教育・介護アドバイザー。2003年、『偏差値30からの中学受験合格記』(学研プラス)がベストセラーに。自らの体験を基に幅広い分野から積極的に発信し、悩める女性の絶大な支持を得る。近著に『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)、取材・執筆を担当した『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(Tadahiko著・双葉社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている 猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(鹿目将至著・双葉社)、企画・構成を担当した『神社で出逢う私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社)など多数刊行。
【公式ブログ】湘南オバちゃんクラブ 【facebook】rinko.torii 【YouTube】鳥居りんこちゃんねる

監修:小西裕美(介護支援専門員・産業カウンセラー・上智大学グリーフケア研究所認定 臨床傾聴士)

『増補改訂版 親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』
著者:鳥居りんこ 双葉社 1485円(税込)

今は介護アドバイザーでもある著者が、初めて母親の介護に直面して痛感したこと。それは「待ってるだけでは何も始まらないのが介護サービス」でした。申請から施設探しに至るまで、あらゆる情報をかき集めながら乗り切った経験を元に、「福祉は自己申告。やったひとだけトクするしくみ」を伝授! 介護認定の上手な取り方や、何が何でも特養ホームに入所させる奥の手など、介護を明るく乗り切るための知恵が詰まった一冊です。2015年刊行の初版に大幅な加筆修正を行い、法律上の変更点を反映させた増補改訂版!


イラスト/渡邉杏奈(MONONOKE Inc.)
構成/金澤英恵