かつて著名IT企業に勤務する社員が、自社が配信したブロガーの記事について侮辱するような発言を行い、記事を書いたブロガーが抗議して同社への転載を拒否するという出来事がありました。ある国立大学の特任准教授はプロフィールを明示した自身のツイッターで差別発言を繰り返し、最終的には謝罪に追い込まれました。発言した当人は「言論の自由」「組織とは別」などと釈明していましたが、当然ですが、そのような理屈が通るわけがありません。

 

肩書きを明示しない、完璧にプライベートなSNSでの発言ならまだしも、自身の肩書きを示した上で、自身の仕事に関連した発言を行っているわけですから、責任が生じるのは当然のことでしょう。

ツイッターなどを見ると、肩書きをはっきりと明示していながら、「自身の発言は組織とは無関係です」と説明している人をよく見かけます。どのように自身を紹介しようが個人の自由ですが、発言が社会的に問題視された場合、無関係であるという理屈は通らない可能性が高いということは理解しておいた方がよいでしょう。

 

もし100%プライベートな発言であるならば、わざわざ自身の仕事の肩書きを明示する必要はありません。頼まれてもいないのに肩書きを示しているということは、その職歴を活用して、より多くの人の注目や関心を集めたいという思いがあるからに他なりません。企業から見れば、企業名や知名度を社員が利用しているという話になりますから、何か問題が発生した時には、知らぬ存ぜぬというわけにはいかないのです。

ネットというのは誰もが見られる場所ですから、そこでの発言には100%責任が伴います。また組織に属している人が、その肩書きを明示した上で発言したことは、組織と関連付けて判断される可能性が十分にあります。もし、公に意見が言いたいのであれば、今回、批判記事を執筆した矢野氏のように、正々堂々と自身の立場を明らかにし、最終責任を取る覚悟で意見表明すべきでしょう。

もちろん、一般のネット利用者が匿名で何らかの感想やコメントを行う権利はありますが、自身について明らかにしていない場合、周囲の人は、その発言については基本的に割り引いて考えるというリテラシーが必要だと思います。当然のことですが、いくら匿名だからといって誹謗中傷などが許されるわけはなく、発言を行った以上は最終責任が発生するというのは誰であれ同じことです。


前回記事「岸田新内閣「対話と再分配」の政治で、私たちの生活はどう変わるのか」はこちら>>

 
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