直接関係ないように見えますが、食料品の価格も原油価格から大きな影響を受けます。農作物を作るためには、農機具が必要であり、これらの多くは燃料にガソリンや軽油を用います(ハウス栽培の農作物については暖房に灯油などを使うためさらにコストが高くなります)。漁業も船の燃料代が経費の大きな割合を占めますから、石油の価格が上がると魚の価格も上がりやすくなると思って差し支えありません。

 

輸入食品については船の運賃が影響します。コロナ危機で世界的に物流が混乱していたところに原油価格の高騰が加わり、コンテナ船の運賃はコロナ前と比較して何と10倍に跳ね上がりました。このコストは原材料価格に転嫁され、最終的には食材全般が値上がりするわけです。

 

では、なぜここまで原油価格が上昇しているのでしょうか。

最大の理由は、コロナからの回復期待で石油の需要が高まっているからですが、それだけではありません。コロナ後は全世界で脱炭素の動きが加速すると予想されており、石油は将来、使われなくなる可能性が高い資源です。産油国にとって、油田に積極投資して生産を拡大しようというインセンティブは働きませんし、高く売って、稼げるうちに稼いでおこうと思っても不思議ではありません。

これまでは、需要が拡大し、価格が上昇した際は、増産して価格を安定させるケースが多かったのですが、今回はあまり増産に積極的ではなく、背景にはこうした長期的見通しが深く関係しています。逆に考えれば、原油価格が今後、極端に安くなる材料はありませんから、価格が高止まりすると予想する専門家が増えている状況です。

原油価格が高止まりすれば、ガソリン価格はもちろんのこと、食料品や資材の価格も高止まりする可能性が高いですから、今後も値上がりした状態が続くと考えた方が自然でしょう。

短期的にはそろそろピークになるとの見方もあり、一時的には価格が落ち着く可能性もありますが、すぐに価格が元に戻るという期待は持たない方が賢明です。


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