私が採用面接をしたり、パート勤務のスタッフの稼働時間を決めたりするとき、「家族がいるから○○はできない」「家族がいるから○時までしか働けない」と口にする人はたくさんいます。この答えから透けて見えてくるのは、仕事と家族のどちらにプライオリティを置いているか。「自分では変えられないものだ」と思っているかもしれませんが、実は自分で決められることではないでしょうか。仕事を探すときや住まいを決めるとき、家族は意外な制約になることもあります。自分自身で一度整理しておくといいと思います。


名もなき家事や仕事も、限界を考えるための要素

 

そして、皆さんがたくさん抱えているだろう「やらなければいけない仕事」。会社での仕事もそうですが、家庭での仕事、例えば、犬を飼っていれば犬の散歩もその一つ。犬を毎日散歩に連れて行く必要がありますよね。ちなみに、うちの娘は「側弯(そくわん)症」という持病があったので、毎日のコルセットの着脱は私の欠かせない仕事でした。持病がある人は、その治療やケアのために必要なことを自分にとっての「仕事」として織り込んでいくとよいと思います。

 

一方で、「体力」は限界を多少動かすことができます。体力づくりをすることで、引き受けられる仕事の幅は広がります。採用面接をしていると「就職を希望していますが、腰が悪いので○○はできません」という条件を出す人もいます。もちろん、どのくらい悪いのかにもよるけれど、運動などで対処していく方法はないのか、改善させる方法を考え、治療をしていけば「腰の痛み」という限界は突破できるかもしれません。これも、本人のプライオリティ次第です。

そして、「お金」。自分がどれだけ稼がないといけないのか、生活していくためにどれだけのお金が必要なのか。これは、生活水準の設定によって大きく変動します。「そんなに安い給料じゃ無理」と断じる前に、一度生活を見直してみると、案外、限界が限界ではなくなったりもするものです。これも後述しますが、私は自分が月々いくらあれば生活できるのかを計算したことで、限界の金額がはっきり見えて不安がなくなり、心が解放された経験があります。これも、自分の限界を知っておくことの効用の一つと言えるでしょうね。

最後に「人」。夫が許してくれない、親が認めない、子どもが、上司が、同僚が。これは関係性によっては変えられるような気がしますが、実は難しいんですよね。他人を変えることは無理だ、と最初から「変えられない限界」ととらえておくほうがいいと思います。