11月10日、第2次岸田内閣が発足。写真は国会内で話し合う岸田文雄首相と茂木敏充幹事長。写真:ロイター/アフロ

衆院選の選挙公約だった給付金の扱いをめぐって、連立与党が迷走しています。公明党は18歳以下の子ども1人につき10万円を支給する案を提唱しましたが、自民党内部からはバラマキであるとの批判が出ていました。この原稿を書いている11日時点では、半額を現金、半額をクーポンにした上で960万円の所得制限を加える案が検討されています。メディアの指摘も「景気対策として効果があるのか」「お金持ちの世帯にも給付されるのはおかしい」など論点が定まっていないように見えます。

 

日本ではいつもの光景なのですが、政策について検討する際、何を目的にしたものなのかはっきりさせないまま議論を進めてしまうことが少なくありません。目的が不明確な状態では論点が定まるはずはなく、それぞれの立場の人が感情的になってバラバラに意見を言うだけになってしまいます。

今回の給付金についても同様で、何を目的に給付金を配るのか明確にしておくべきでした。具体的には、景気対策なのか、困窮者対策なのかという問題です。

上記のような意見を述べると、必ずと言ってよいほど、景気対策でもあるし、困窮者対策でもあるという、足して二で割ったような批判が出てくるのですが、こうした論法はロジカルな議論を進める上では御法度です。もちろん物事をデジタルのように100%白か黒かで切り分けることは不可能ですが、同じお金を配るという行為であっても、景気対策としての給付と困窮者対策としての給付では、そのやり方は180度変わってきます。

景気対策であれば、今、伸びているビジネスを支援するのが最も効果的であり、その業界に多くの人が流れていくよう誘導するのが原理原則です。つまり、うまくいっている人たちをさらに伸ばすというやり方が基本と考えればよいでしょう。

一方、困窮者対策は正反対です。今、生活に困っている人、仕事がうまくいっていない人を支援しなければ困窮者対策にはなりません。困窮者を救済することは長い目でみれば、経済に対してプラスの効果をもたらしますが、短期的には景気対策としては大きな効果は見込めないと考えるべきです。

今回の給付金について、景気対策として実施するのか、困窮者対策として実施するのかで論点は大きく変わりますが、給付金の性質からして、困窮者対策の色合いが濃いことは一目瞭然です。したがって、困窮者対策として効果があるのかについて議論をするのがスジであり、その点からすると景気浮揚効果が薄いといった批判はそもそも的外れということになります。

同じような論点のズレは昨年、実施された一律10万円の特別定額給付金に関する議論でも散見されました。

 
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